お題

□貴方がいない世界なんていらない
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もしお前に呼ばれることがないなら、名前なんていらない。
もしもお前に触れられることがないなら、この体もいらない。
もしもお前がいないなら、この世界に意味なんてないんだ。
俺は、狂ってる?


情事後の体は確かに疲れているはずなのに、なぜだろう眠れないのは。
俺の腹のあたりに腕をまわして規則正しい寝息を立てる古泉に、少しだけ安堵する。
夜中に自分ひとりなのとこいつがいるのとでは安心感がずいぶんと違う。
でも、もし古泉がいなくなったら?
俺の前から?この世から?世界から?
その時、俺はどうなる?
いやだ、想像もしたくない。古泉がいない世界で俺は…
頭が、視界が、靄がかかったように急速に霞み始める。
ぽろぽろ、大粒の涙。自覚すればもう、涙を止めることは敵わない。
古泉が起きちまう、止めないといけない、のに、
「…っう、ひっく、」
嗚咽がもれる、体が勝手に震える。
「ん…キョン君?」
寒いですか?と少しかすれた声がする。古泉がここにいる、という安心感からか、一層嗚咽がもれる。
「っく、ふぇっ、」
みっともない、情けない、見ないで、聞かないで、そんな僅かな理性はすぐに吹き飛ぶ。
「キョン君、どうしたんです?」
焦った声で、俺の髪をなでつける、大好きな暖かい手。
「こいず、みぃ」

得体の知れない不安を打ち明けたら、俺の頭をなでる古泉も、涙を流しているような気がした。




素敵なお題を見つけてわくわくしながら書きました(´ω`*)
お題初挑戦!

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