12星座達の日常

井戸に住み着く地縛霊
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─深夜2時

とある一軒の古びた大きな和風のお屋敷で、それは起きた。




ふと、こんな真夜中に目が覚めてしまった男は、布団からのそのそと体を起こすと、部屋の襖を開けて用を足しにお手洗いへ向かう。




男が用を足してると、何かに気づいて顔を上げた。




「……?」




どこからともなく呻き声のようなものが聞こえるのだ。




気になった男は用を足し終えると、お手洗いから出て様子を確認するため靴を履いて外へ出た。




「?」




しかし、男が外に出た途端、奇妙な呻き声は聞こえなくなったのだ。




変だな…




そう感じた男はまるで何かに導かれるように、何の躊躇いもなくある場所へと向かう。




男が向かってる場所は、かつて良くない噂と共に封印された井戸のある、立ち入り禁止の広い裏庭である。
もちろん立ち入り禁止のため、庭に足を踏み入れた者はいない。

男は今まさに、その立ち入り禁止の裏庭に入ろうとしてるのだ。




裏庭の前に着くと、その庭を封じ込めている“立ち入り禁止”と書かれた扉を無理矢理強引に抉じ開ける。

“立ち入り禁止”と書かれてあるにも関わらず、どうしてこんな場所へ足を踏み入れる気になったのか、男は自分でもわからないようだ。

男は恐る恐る庭に入って行くと、目の前に一つの大きな井戸があるのを確認した。




井戸だ…
もうかなり古いや…




その井戸には蓋がしてあって、その蓋には無数の御札が貼られていた。

まるでその中に、この世に出してはいけない何かを封印するように…




男はここまで来て、急に寒気を感じた。




な、なんか嫌な感じだな…
そろそろ戻ろう。




顔を青くしながらそう考えて、男は自分でこじ開けて庭に入った時に閉めた扉を再び開けて外に出ようとした。

しかし…




「……え?」




なんと、扉は開かない。
然程強く閉めたわけでもないのに、ビクともしないのだ。




お、おかしい…!
なんで開かないんだ!?




男は必死に扉を開けようとする。
やはりそれでも扉はビクともしなかった。




男は一気に恐怖心に襲われた。







「誰か!誰か助けてくれ!扉が開かないんだ!誰か!!」




近所の人達にも聞こえるくらいの大声で助けを求めながら、開かない扉を右手の拳でひたすら力強く叩く。




「誰か!誰かいないのか!?助けてくれ!!誰か!!」




しかし、いくら叫んでも誰も助けに来てはくれない。
男はとうとう、泣きそうな表情になりながら必死に扉を叩いたり開けようとしたりする。

「誰か!!助けて!!誰か!!」




と、その時











カ エ シ テ …




「……っ!」




どこからか弱々しい女の声が聞こえて、男はビクッと肩を振るわせた。

それは井戸のほうから聞こえていると感じた男は、体を震わせながら恐る恐る後ろを振り向く。

すると、また声が聞こえた。








カ エ シ テ …








さすがに恐怖で耐えられなくなった男は、泣き叫びながら必死に扉を叩いた。




「嫌だ!!誰か!!誰か来てくれ!!助けて!!誰か!!」




しかし声は次第に男に近づいていく。






カ エ シ テ …







イ タ イ …







カ エ シ テ …







「カエシテ」と「イタイ」を繰り返す弱々しい女の声に身を震えあがらせながら、男はただただ涙を浮かべた瞳で井戸を見る。

すると、封印されているはずの井戸の蓋が少しずつ、ゆっくりと開き出した。




「ひっ…!!」




蓋の開く“ズズズ、ズズズ”という奇妙な音に、男の肩が跳ねた。





イ タ イ …





「あ…、ああ……」




次第に井戸の中から何かが出てくる。
男は恐怖で開いた口が塞がらない。





カ エ シ テ …






徐々にその姿が見えてきた。
そしてとうとう、男は見てしまった。











「カ エ シ テ …」











「ぎゃああああああああああああああああああ!!」





男の叫び声は、深夜2時の夜空へと消えていった。
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