12星座達の日常
□電磁の覚醒-jun mouri-
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あの時はまさかあんなことになるとは思わなかったんだ……
「お兄ちゃん、見て見てー!」
そう言ってブランコに座る純に、公園の砂場で作った泥団子を見せる5歳の妹、毛利菜々(もうりなな)。
「上手くできたじゃん!でも菜々…」
「ん?」
「白いワンピースが泥まみれだよ?」
「…あっ!」
純に言われてようやく気づいた菜々は泥団子を片手に、泥まみれになった白いワンピースをもう片方の手でつまみ上げた。
「どうしよう〜。ママに怒られちゃうよ〜」
「ハハハッ。しょうがない、そのまま帰るしかないよ。」
そう言って純は、あたふたする菜々を落ち着かせた。
その頃、純はある親子に目がいった。
「何を突っ立ってるの!いつまでもこんなところにいないでさっさと帰るわよ!?」
何やら母親が自分の息子にしかりつけているようだった。
しかし、息子はだだこねもせず泣きもせず、俯いてただ立ったままその場を離れようとはしなかった。
「もう夕飯も作っちゃったのよ!?早く帰らなきゃまたパパに怒られるじゃないの!」
「…………。」
「それにこれから塾もあるんだから、早く帰らなきゃまた遅刻するわよ!いい加減お母さんを困らせないでちょうだい!!」
「僕は……」
そんな親子のやり取りを見て純は何か嫌な予感を感じていた。
端から見れば、子供をしかりつけている普通の親かもしれない。
だが、純にはそれだけでは済まされない何か別の殺気にも似たオーラを感じ取っていた。
「お兄ちゃん、あの男の子お母さんに怒られてるね…」
菜々がそう言いながら、哀れむような目で男の子を見る。
「………………。」
何か不吉な予感が後をたたなかった。
男の子は静かに口を開いた。
「僕は…僕は……!」
すると次の瞬間、男の子の首に赤く光る傷痕のようなものが浮かび上がった。
「お母さんの犬じゃないっ!!」
そう叫んだ瞬間、男の子の陰が伸びてそれは人間離れした姿に変わって現れた。
「!?」
「きゃぁあああー!!」
純は目を見開いた。
恐らく本人に関わる人間や、第三者には見えるそれは男の子の母親にも見えている。
母親は、悲鳴を上げて足を崩しその場に座り込んでしまった。
そんな母親の悲鳴を聞いて、公園にいる他の子供達やその母親は何事かと、男の子の母親に視線を向けた。