★short story★

□come on baby! 後編
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「で、あたしはどこで寝ればいいの?」

食事を済ませた後、ナツとロキが色々喋っている間に風呂やらなにやら済ませたルーシィは、
寝間着(つってもいつものように露出が多い服なんだが)に着替え、タオルで濡れた髪を拭きながらナツにそう訪ねた。

「ん」

床にあぐらをかいて座っているナツはルーシィの方を向きながらベッドを指さした。
おいおい、まさかとは思うけど…。

「え、あたしベッドで寝ていいの?」
「おう、いいぞ」
「やったぁ、ナツ気が利くじゃない」
「あたりめーだろ?」
「あれ、じゃあナツはどこで寝るのよ?ベッドじゃなくていいの?」

そう。問題はそこ。
ナツの事だからロキとは違って変な意味は持ってないんだろーが、

「ベッドだぞ?」
「は?」

流石にそれは俺たちが許せない。

「ナツ!それは駄目だよ!ルーシィと一緒に寝るつもり!?」
「そーだぞナツ!ふざけんな!」
「うるせーな。別にいいだろー」
「よくないわっ!!」

当事者(ルーシィ)がナツの頬をいったん渾身の右ストレートで打ち抜いた。

「ナツがベッドで寝るならあたしは床でいいわよ…いくらあんたが馬鹿で天然で純粋でもそれは嫌」

ある意味それは俺たちよりはいいけどって事なのかもしれない。

「えー…、ていうか、ロキとグレイはいつまで居るつもりなんだよ」
「俺は今日泊まるぞ。帰るのめんどくせーし」
「僕はルーシィの居るところに居るよ」

★グレイの口実→帰るのが面倒
★ロキの口実→ルーシィがここにいるから

2人とも各々の口実(ロキはストレートなのかもしれない)を使ってここに居ることを選択。
しかし、こいつ(ロキ)までいんのかよ…面倒くせー。
多分ロキも同じ事を考えているのだろう。

「ちぇ、なんだよ勝手いいやがって…」
「あー、床かぁ今日は…腰痛くなっちゃうけどしょうがないか」
「じゃー俺床で寝るからルーシィベッド使って良いぞ」
「…侵入してこないでよね」
「しねーって」
「あんた達もだからね?こんな可愛い女の子が目の前にいたら一緒に寝たくもなるかもしれないけど」
「自分で可愛いって…ルーシィ、なんかイタいよ」
「お黙んなさい、猫ちゃん」

「…あ"い」
出た。ツッコミ。今回のツッコミは暴力ではなく威圧感のようなものだった。
冷めた表情で上からハッピーを見下し、まるでエルザみてーだった。
その表情にやられたのか、ハッピーは自分の発言に公開をしているようで、冷や汗たっぷり流しながらひきつった笑いで返事をした。

「でもルーシィは本当に可愛いんだけどね」
「黙ってればだけどな」
「グレイ、一言余計よ」
「…あ"い」

黙ってればそりゃーもう美少女だろーな。
もちろん今のままでも美少女って言うことに代わりはないんだけど、
普段の激しいツッコミをして、ギルドでみんなと一緒に騒いでるルーシィを知ってる俺たちから見れば、
ある意味普通の少女って感じもする。

「ま、いいわ。あたし寝るから」
「!!」
「絶対に。


入ってこないでよね。特にナツ」

「お…おう…」

ここまで言われたらもう侵入しようなんて奴はいないだろう。

*-*-*-*-*-*-*

「…イ、グレイ」

眠りについていたはずの俺を誰かが起こしているのがぼんやりわかる。
朝…にしては空が暗いし、それに隣ではナツのいびきがきこえる。

「グレイ、ちょっと起きて」

意識がだんだんとはっきりしてきて、その声の主もなんとなく理解した。

「どーしたルーシィ…今何時…」
「まだ2時。ちょっと来て」
「なんだよ、外?」

完全に目が覚めた俺の腕を引っ張って、ルーシィはナツたちに気付かれないように、静かに外へ移動した。

「えへへ、ごめんね。起こしちゃって」
「あぁ、いや…それよりどーした?」
「ん、あたしもついさっき目が覚めちゃって、外見てみたらすっごい星がきれいでさ。
グレイにも見せたいなって思って。ほら、すっごいきれいでしょ?…迷惑だった?」
「んなことねぇよ。確かにすげーな」
「でしょ?よかったぁ。実はちょっと不安だったのよ?怒らせたらどーしようかなって思って」
「怒るって…こんなこと、泊まりがけで依頼に行ったときはしょっちゅうだし平気だ」
「うん。きっとグレイなら大丈夫かなって思って」

そう言ってパッと俺の方を見てニカっと笑った。
月明かりのせいなのか、いつもの笑顔とは違う、可愛いっていうよりきれいって感じの笑顔で、

なんか見とれてしまった。

「うん、やっぱりあたしの思った通り。グレイは優しいもんね」
「まぁな」
「え、自分で優しいとか認めるんだ」
「自分で自分のこと可愛いって言う奴に言われたくねーな」
「うるさいわね。あたしは可愛いからいーのよ」
「ほらまた言った」
「だーかーら、可愛いからいーのよ」
「そーだな」
「ありがと」

*-*-*-*-*-ルーシィSide

なんとなく目が覚めたときに、なんとなく窓の外に目が行って、
そしたら雲一つ無いきれいな星空だった。
なんだか無性にグレイに見せたくなって、
ちょっとだけ、ちょっとだけ不安を抱きながら、でもグレイなら大丈夫って思って。

グレイを起こして外へ連れ出した。

外に出てみると、部屋の中から見たとおり満点の星空で、
グレイも笑顔になってくれて嬉しかった。

グレイは優しいから大丈夫だと思って、そのあたしの一言から続いた会話は、
いつもみたいな調子の会話で、
「可愛いからいーのよ」

またいつものように調子よく発言した。

「そーだな」

思いがけないグレイの一言に、すごく胸がきゅんってなって、
ナツやロキに言われるのとは違ううれしさがこみ上げてきた。

「ありがと」

そう強がっていつもみたいな笑顔を見せたけど。
実際内心では凄く嬉しすぎて、気を付けなきゃその笑顔がゆるんで、ニヤニヤしてしまいそうだったから、
頑張って平常心を保とうとした。

「ねぇ、グレイ」
「何だよ」
「あのさ…」

いってもいいのかな、って考える。
好きっていっても、いいのだろうか。
たまによむ恋愛小説では、雰囲気に流されて告白して、で、上手くいって、なんていう展開が待ってるけど、
現実そう甘くはない。

「ううん、なんでもない」

言葉を飲み込む。
危ない賭けにでるのはやめよう。
これから、もっともっと。
もっとあたしのことをグレイに知って貰う。
もっとあたしを見て貰う。

グレイがあたしを好きになってくれるまで。

*-*-*-*-*-*

ルーシィはなんでもない、とごまかしたけど、
その先の言葉がなんなのか、気になってしょうがない。
だからと言って問いつめたって、何も変わらないだろう。

どうしてルーシィは俺だけを外に連れ出したのか。
どうせ見るなら、みんなで。ルーシィはそう言いそうな気がするのに。

もしかしたら…なんて思ってみても、ルーシィの思っていることなんかわかるわけがない。
いっそのこと、今、好きだと言ってしまえばいーんじゃねぇのか。
でもルーシィは優しいから、もし言って断られた後は、しばらく気を遣うかもしれない。
そんなのは絶対にお断りだ。

「そろそろもどろっか。冷えて来ちゃったし…。付き合ってくれてありがと、グレイ」
「あ、あぁ、そーだな」

しばらく考えた末、ルーシィに気を遣わせるのは絶対に嫌だと思って言うのはやめると決めた、

そのはずだったのに。

部屋に戻っていくルーシィの背中を見ていたらどうしようもない程離したくなくなって、

「…グレイ…?」

ほぼ無意識にルーシィを抱きしめた。

「ごめん、ルーシィ…俺、ルーシィが好きだ」
「…ほんとに?」
「本当だ」
「嘘でしょ…」

その言葉を聞いたとたん、虚しさがこみ上げてきて、「ごめん」、そう言おうとしてルーシィの体から手を離そうとした。

「なんだ、そっかぁ…」

ルーシィの口から漏れたのは、安堵の声だった。

「なんだ…あたしもまだまだってことかなぁ」
「ルー…」
「…あたしもね、その、グレイのこと、好きだったのよ?」
「…」
「さっきここに来るのに誘ったのも、…ごはんの時のハンバーグも。その、グレイが良かったんだ」

全てのいきさつをルーシィから聞いた俺は、なんというか、嬉しいんだけど、疲れたような微妙な感じがした。

「なんだよ、結局は2人とも似たようなこと考えながら星見てたって訳か」
「そーいうことよね。あー、おかしー」

「俺にとっちゃ結構でけぇ賭けだったんだぞ?」
「うん、やっぱり告白は男の方からするものってことよね」
「おいおい…」
「雰囲気に流されてるわけでもない」
「何のことだよ」
「やっぱりあたしの見る目は間違ってなかったってことで」
「結局自分か」
「何よ、ていうか寒っ!!…ていうか、服…」
「はっ!!」
「流石氷の魔導士は違うわ…あたしそんなの耐えられないもの」
「この脱ぎ癖はいらねぇけどな…ウルのせいで…」
「はいはい、戻るわよ」
「おう」


おわり。

*-*-*-*-*-*-*-*
「のぁぁぁぁぁああっ!!」
「どーしたんだよ、ナツ…って、えぇぇぇぇええ!?」
「ちょっと、ナツうるさい…」
「ルルルルーシィ、おま、お前それどういう事だよ!」
「え?」
ナツもロキも焦りながらあたしの寝ていたベッドを指さした。
「んだよ…うるせーな」
「なんでテメーがルーシィのベッドで寝てやがんだ!」
しまった。ナツ達にはばれないようにちょっとだけ、とかいって昨夜ベッドで少し話したのは覚えてる。そのまま寝ちゃったんだ。
「どーもこーも…

こーいうことだ」
まだ少し眠そうにしてるグレイは、多分半分目が覚めていない状態であたしを抱き寄せた。
「な、」

「「なんでだーーーっ!!!!」」

=========後書き
むぅ…((きめぇ。 なんだか最初の方は楽しかったけど、途中グレイとルーシィが葛藤するところつまんなかった。そして結局グレルー落ち。グレイいいとこどり。ナツが良かったなー。←
さいごのおまけが一番書いてるの楽しかった。真ん中ぐらいからもうそこを書くことが目的だった。
ナツとロキに「なんでだ」って叫ばせたかった。
途中ヘタレだったはずのグレイが最終的に強気になった。乾杯。





4月2日  夏目 緋色。
 

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