★short story★

□CHERRY
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さくらんぼ。よくテレビドラマだとか少女漫画とかではふたごの奴が出てくるけど、実際食べてみるとそんなの少ない。
ていうかほとんどない。ひとつばっかり。何これ夢がない。

それでもさくらんぼを食べ進めるあたし。へたがお皿の上でピラミッドを作っている。
それでもまだ食べ進める。だってさくらんぼだし。太らないもん。多分。
食べながらあたしは真向かいのベッドに寝転んでいる桜色の頭の阿呆面で気持ちよさそーに寝てる奴を見た。


何これ。あれーあたしたちってその、ここ恋人なんじゃなかったっけ久々の休みと思ったらこれですかなんじゃそれー。
もう駄目。考えてることまでおかしくなってきた。もう知らない。寝たいなら寝ればいいのよ馬鹿ナツばかばかばか。
もう不貞寝してやるんだから。あ、ナツ寝てるじゃんもーなんでよ最悪。
ベッドまで占領されて一人でさくらんぼ食べてなんでなんでもうなんでこんなことになってんの。





もういーや。あたししーらないっ。
一人で出かけちゃうんだから。起きた時あたしがいなくてもどーせさっさと帰っちゃうんでしょばーか。
ちょっとくらいそっちも寂しいとか思ってくれればいいけどこの馬鹿にそんなの期待できない。
あーあ、あたしってばとんでもない奴を好きになっちゃったのねー。


「…ばーか」


今度は口に出して、それから家を出ました。






あぁもうどうしてナツってあぁなんだろう。天然だから?でも天然だからってなんでもかんでも許されると思ってたら間違いなんだから。
あたしだって寂しいのに。寂しいのにいっつも一人。結局あれじゃん、恋人なんかじゃないんじゃないの。上辺だけ。口だけ。
中身なんてなーんもない付き合いってやつ。
ナツだって心配してくれればいいのにばーか。あぁもうあたし何回おんなじ台詞言うんだろ。


結局ナツが隣にいないなんてつまんなさすぎて、寂しすぎて。
でも家に帰ってもまた一人、なんて考えたら足が家に向かうこともない。
気がつけば時間は3時間もたっていて、「かえろ」って呟いて家に向かった。
結局最後には帰るんだしもーいいの。


ナツがぜんぶわるいんだからね。





「ただいまー…」
少しどきどきした。帰ってるのかな。帰ってたらどうしよう。
帰っちゃえばいいのにとか思っててもやっぱり無理。帰らないでほしい。


「……あーあ、」


駄目。もう駄目。あたしたち、付き合わない方がよかったんだね。
案の定ナツはもういなかった。ベッドは人が起きた、その様子のまま。
窓は開いてた。少しだけ。
そこから冷たい風が入ってきてるのが、妙に切なかった。

「寝よ…」

いっかい頭の中リセットするの。
そう思ってベッドに向かいだした体が誰かに遮られた。誰か、なんて。あいつしかいないのに。

「…何してんのよ」
「ぎゅってしてる」
「なんでまだいるの」
「いちゃいけないかよ」
「う…」

なんでナツのほうが有利なのよ。今の状況考えてー、はい、あたしの方が可哀そう。完全にあたしのほうが可哀そう。

「だってあたしずっと一人だったんだもん」
「俺も起きたら一人でびびったし」
「だって暇だったんだもん」
「ルーシィがいると安心しちまったんだよ」
「…」
「だからいなくてちょっと焦った」

ちょっと顔をあげてみたらナツはニカって笑ってた。あーもうほんと、惚れた弱みってやつだわ。安心した、なんて言われるともう何も言えないじゃない。

「あたし一人で寂しかった」


ちょっと震えた声だった。かっこわるい。
けど、思ってたこと。言いたかったことは言えた。
ナツの顔を見たらちょっとびっくりしてたみたいだった。何よ、あたしが寂しかったらおかしいの?失礼すぎるでしょ。
そう言ったら、またいつものニカっとした笑みを見せた。

「寝よーぜ!」
「は?」
「だーかーら、寝ようぜ」
「今の流れからしてその発言はおかしいんじゃないかしら」
「寂しいなら一緒に寝ようぜ。そうすれば寂しくないだろ?」
「え。あ、いや確かに寂しかったわよ寂しかったけどそれとこれとは話が別っていうか」
「なにがだよー、ほら、いくぞっ」
「えっ、え」


そのあとはもうされるがまま。あたしはナツにベッドに連れられて、まさかの一緒に寝るなんてことに。
いやいや、恋人だから、その、そ そういうこともある…のかも、しれないけど。あぁもう恥ずかしい。
でも横で目を瞑ってるナツを見たらそんな想像をした自分が違う意味で恥ずかしくなった。もーこんな奴いいよ。あたしも寝る。
なにもかも投げやり。あー、やっぱこいつただのバカだったんだ。

「ルーシィ」
「…何…っ、んっ!」


一瞬頭がぐらついた。急に名前を呼ばれて渋々振り返ったあたしの唇はふさがれた。
いつもみたいな軽いキスじゃなくて、その、なんかもっと奥まで来る、ふ、ふ、深い、の。

あぁぁぁぁぁもう何がどうなってこうなったのかあたしにはさっぱりわかんないよ。

「顔赤いぞルーシィ」
「う、うううるさいっ」
「ルーシィ」
「なによもう死ね馬鹿!」
「大好きだぞ」



「…ってまた寝るのー!?」

今すっごいきゅんってする台詞言ってくれたばっかりなのにやっぱり好きだな、とか思ったのに何それ。
寝るの早すぎでしょていうかあんなキスしといて…。
も、もう駄目。やっぱり駄目。あたしはナツの反対方向を向いた。だって恥ずかしくて顔なんて見れなかったから。

とりあえず今日で再確認。
この天然馬鹿の頭の中はさっぱりわからない。


…あ。

多分、こいつ食べたな。
触れた唇が、さくらんぼの香りだった。



机の上にひとつだけ残されたふたごのさくらんぼに気付いたのは、次の日の朝だった。


*-*-*-*-*-*-*-*-*
相互記念に書いたけどあれこれリクエストと違うじゃーんって自分で気づいた問題作。
最低なことをしてしまいただいま後悔の波に流されております。申し訳ありません…。
微微微裏。あくまでもこれは裏ではない。微裏でもない。微微微裏ですので。
えへへへへ。リクのつもりで書いたけど間違いですからねお持ち帰り駄目ですよってことでshortのページへお引っ越ししました。
上が完成日、下の日がお引っ越し完了。

2010.5.18
2010.5.21

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