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□お前らには高嶺の花だ
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「買い物ぉ?」

いつものようにギルドの酒場でグレイとの勝負(喧嘩)をエルザの制裁により強制的に終了させられたナツは、パスタをかき込みながらそう聞き返した。

「そう。久々の休みだし、最近ゆっくり買い物なんてしてないから。付き合ってくれる?グレイも」

ルーシィはいつものように足をくみながら、今日は手をあわせてウインクをしねだってきた。

「俺は別にいいけど、その顔きめ「うるさいわねっ!!ていうか食べるの早っ」…ってー…。」

全部言い終わる前に右隣から鉄拳が飛んできた。というか食べる早さは関係無いと思う。
いつも通りでも付き合うのに、という意味だったのに、なんて隣に聞こえないくらい小さな声で呟いて。

「俺も別にいーぞ」
「よかったぁ。エルザとかミラさんとかにも頼んだんだけど、エルザは仕事だしミラさんは週ソラの撮影なんだって」
「レビィやカナは?」
「駄目。レビィはチームで遊ぶんだって。カナは良い酒が入るからって」
「酒かよ…」
「本当、友達よりお酒だなんて…」

溜息をつきながら向かいに座って樽に入った酒をがばがば飲んでいるカナをじっと見た。

「いいじゃないの、別に。酒はあたしの動力源」
「はいはい、そーよね」

残念そうにしながら、それでも楽しそうにあはは、と笑みを見せた。

「と言うわけで、明日10時に公園ね」
「せっかくなんだしちょっとは可愛くして来いよなー」
「ナツ、それどういう意味?あたしはいつでも可愛いわよ」
「怒るなよ、そう言う意味じゃねーって。…ていうか、自分で自分のこと可愛いとか…」
「黙らっしゃいナツ」

ルーシィはものすごい早さでその言葉に反応し、ナツの首を締め上げた。
「ルーシィも案外わかんねぇ奴だな」
「何よグレイまで。そんなに馬鹿にしてると首の骨折るわよ?」
「…やめろ」

ナツの首を絞めたままそんなブラックな台詞を吐くルーシィに真剣な顔をして訴えた後、しばらくしてグレイはニヤっと笑った。

「な…何よ」
「いつもよりも可愛くしてこいってことだ」

「あ、あああああ、うん。そ、そういうこと。そうよね、うん」

わからなかったことい焦りを感じているのか、それとも素直に照れているのか、おそらくは後者なのだと思うが、はいはいと続けた。

「じゃああんた達が隣を歩くのに恥ずかしいくらいお洒落してきてあげる」
「そーですか」
「そーよ。ナンパとかされちゃったりして?」
「ルーシィ、寝言は寝て言えっていうことわざ知ってる?」
「…焼かれたいのかしらこの青い猫は」
「口が滑りました」
「滑るってことはいつも思ってるんだ」
「とんでもないですルーシィ様」
「様付け!?なんか気持ち悪い!!」
「あい、オイラも思ったよ」
「…やっぱり焼いた方がいいのかしら」
「すみません」
「土下座…」

ルーシィの目の前に正座して座り、ハッピーは丁寧に土下座をした。
ルーシィはその姿に少しだけ引いていた。

「じゃ、あたし帰るから。明日忘れないでよね?」
「おう」「大丈夫だって」
「ばいばーい」




「お洒落ねぇ…」

そういえばここんとこ似たような服ばかりだ。別に気を使ってない訳じゃないけど、たしかに普通といえば普通。
髪型はいつも同じだし、お風呂こそ毎日入ってるけどご飯だって簡単なものしか食べてない。
そう考えると明日はたまにお洒落する良い機会なのかもしれないなぁ。
どうせ仕事に行くならいつものような格好をしなくちゃならないんだし、たまの休みくらい羽目外すくらいしていいはず。

「ね、プルー。明日はキャンサー喚んじゃおうかな」
「ププン」
「ちょうど喚べる曜日だし、お洒落しちゃおっか」
「ププン」
「そーよね。さすがプルー。あたしの事わかってる!」
「プーン…」

プルーもルーシィもお互いの言葉の意味をわかっているのか謎なまま会話を続けていた。
ルーシィは自分に都合の良い解釈をしているだけだろう。


「よし、今日は早く寝て明日に備えよう!…ていうかあたし少女漫画みたいで気持ち悪いわ…」

自分の発言に自分でツッコミながらルーシィの夜は更けていった。




*-*-*-*-*-*-*次の日



グレイが待ち合わせ場所についたとき、ナツはまだ来ていないようだった。
噴水のそばに立っている金髪の少女を見つけたグレイはそのそばに駆け寄った。
だがナツではない、知らない男が2人、ルーシィに話しかけていた。

「あたし、暇じゃないの」
「嘘嘘、暇そうじゃん一人で突っ立ってて」
「関係ないでしょ?近寄らないでくれる?あんた達に近寄られるとあたしの魅力が下がるんだけど」
「またまたー、もしかして俺等のこと怖かったりする?怖くないよー」
「…この「いいから離れろよ」」

男につかまれたルーシィの腕をとり、絡んでいる男達に向かって言い捨てた。

「…グレイ」
「なんだテメェ」
「てめーらこそ何してんだこんな朝っぱらから。
ルーシィは俺と出かけんだよ。帰った帰った。ルーシィ行くぞ」
「あ…うん」

しっし、と男達にむかって手を振り、ルーシィと別の場所に移動しよとしたものの、相手もナメたような態度が気に入らないのかグレイの肩につかみかかってきた。

「テメェ…!ぐっ!」
殴りかかってきた相手をスルリとかわし、溝に強い拳を一発いれた。

「弱えーくせに調子のってるからこんなことになるんだよ。じゃあな」
男達も実力の差を理解したらしく、それ以上は手を出してこなかった。


「何絡まれてんだよ」
「知らないわよ、勝手に絡んできてたの。大体グレイが来るの遅いのが悪いんだから。
あたしが手をかけてお洒落してるんだから、ナンパされたって当たり前でしょ?」
「昨日も言ってたよな、それ…」
「ほら、言ったとおりになったでしょ?ていうかやっぱり今日のあたしいつもより可愛いでしょ」

ほら、と言う風にベンチに座っているグレイお目の前に立って見せびらかした。
たしかに今日のルーシィはいつもみたいなカジュアルな服装ではなく、ふわっとした、『可愛い』服を着ている。
髪の毛も片方にまとめてはおらず、二つに結んで巻いてあった。
それはいつもよりも『可愛い』ルーシィだった。

「あぁ、可愛い」
「な、なんかエロい…」
「はぁ?人がせっかく褒めてやってんのになんだその言いぐさは」
本当、結構勇気だして言ってたりする。
面と向かって、しかも改まってとなると恥ずかしいものは恥ずかしい。
それを文句言われたとなると、言い損だ。

「あたしそんな風に言って欲しかったんじゃないもん」
「そーですか…。あ、あれ、ナツじゃね?」
「あ、本当だ。ナツー!」

ぶんぶんと大きく振った手にナツも気付いたらしく、駆け足でこっちに向かってきた。

「よー」
「おはようナツ。どう?今日のあたし」
「うん、可愛いんじゃねーの?」
「…軽っ」
「なんだよー、人がせっかく褒めてやったのに…」
「グ、グレイと同じ反応しないでよ!」
「うるせーな、こいつと一緒にすんな!」
「なんだとこのつり目野郎!」
「うっせーよタレ目!」
「せっかく出掛けてるんだからこんな時まで喧嘩しないでよ!」
「ルーシィ、可愛いね」
「あら、ありがとハッピー」
「「なんでハッピーには違う反応なんだよ…」」
「さ、まずは洋服屋に行きましょー。最近買ってないから色あせちゃったりしてきたの」
「ふーん。で、どっちだ?」
「あっち。10分くらい歩いた所よ」
「おぅ」

歩き出したら今日は出掛け日和らしく、いつもよりも人がたくさんいることがわかった。
普段でも可愛い方であるルーシィにもそこにいる多くの人々の目線が行っていて、近づいてくる野郎共もちらほら。

「何してんのー?」
「関係ないでしょ。近寄らないで」
「こんな奴らなんかよりも俺等のほうがたのしいって!」
「うっせー!こんな奴らとはなんだ!ルーシィに気安くさわんじゃねー!!!」

近寄ってきた男達がルーシィの肩に触れたのがナツには気にくわなかったらしく、いとも簡単にぶっ飛ばしてしまった。
最初は驚いていたものの、ナツにびびったのかそのままいそいそと逃げ出した。

「けっ、めんどくせー。何話しかけられてんだよ」
「あんた達がお洒落してこいって言ったんじゃない。ていうかあたしに言わないよ!勝手に向こうが来たんだから!」
「…」
「何、ナツもしかしてやきもち?やきもちするならなんか違う気がするけど…可愛いとこあんのねー」
「ち、ちげーよっ!!!!勘違いすんなー!!」

照れた。完全に照れた。

ナツは焦って照れて、炎まで吹いてばたばたと暴れている。
「はいはい、今日は大変かもねーあんた達」
「何が?荷物持ち?」
「…たしかに荷物はもって貰おうかなとか思ってたけど、そんなにこき使わないわよ」
「あい、意外です」
「ハッピー…、さっきの噴水に沈めるわよ」
「すみません」
「それ言えばなんとかなると思ってる?」
「…ルーシィ、冗談だよ」
「そうよねー。当たり前よねー」
「大丈夫だって、俺らが近寄らせねーから」
「やっぱりこういう時に頼りになるのはグレイよね。よろしくね」
「おぅ」




「ねぇ、どうこれ?結構可愛いと思わない?」
「そーか?それよりこっちの方がいーんじゃねーの?」
「そうかなー…、ま、ここはグレイを信用してそっち買うことにするわ」
「後で文句言うなよ」
「言うかも」
「おい…」
「冗談。大丈夫、このあたしに着こなせないものなんてないわ」
「…」
「何よその目は」
「じゃあこれ着てよルーシィ」
「何よハッピー……、…。って、何これ!?」
「スク水」
「な、なんでそんなものがここにあるわけ!?」
「あったよ。そこに」

ハッピーの指さした方を見てみると、そこにはスク水がサイズ別にずらーっと並んでいた。

「な、ななななんでそんなもの売ってるのよこの店ー!!!」
「でも着こなせないものはないんだろー?」
「な、ナツまで!?何期待してんのよー!!絶対着ないからね!」
「ちぇ、なんだよ」
「なんだよって何よなんだよって…!」


なんだかんだあったが結局ルーシィは1時間くらいで買うものを決め、店の外で待っていた。

しかし10分待っても出てこない。


「おっせーなー。また誰かに絡まれてんのかー?」
「ありえんな。俺ちょっと見てくるわ」
「俺も行く!」
「…店のもんぶっ壊したりすんなよ…」
「お前には言われたくないけどな」
「うるせぇ」

案の定、店の中では大きな紙袋を下げたルーシィが男一人に話しかけられていて、結構しつこそうだった。

「ちょっ…、いいから離してよ!」
「そこのー!!」
「!?、ナツ!?グレイも!ていうか店員さんなんでスルーしてんの?!」
「…なんか店員忙しそうだけどな。レジ混み始めてるし、スルーするしかねーんじゃね?」
「そんなこと言ってないでこいつどっかやってよ!」
「こいつってことはねーだろー嬢ちゃん」
「うっさいわね!」
「がふっ!!」

「…あ」

「つ、強い…」

「ルーシィ、そこは痛てーよ…」
「うん、そこ弱点…」

ここまで言えばわかるであろう、ルーシィがファントムの時にもマスタージョゼを蹴ったところをまたも攻撃していた。

「…ま、まぁ…、自業自得よ。ほら、いくわよ!」


「へいへい」


涙目のまま倒れこんだ男はそのまま放置して足早に店を後にした。
ごめん、お店の人。さすがに店は出した方がよかったかもしれないですね。

なんて思いながら。


*-*-*-*-*-*-*-*


「なーんか疲れたなぁっ!」

買い物を終えた4人(ハッピー含む)はルーシィの家に来てくつろいでいた。
「でもおかげで買いたいものは全部買えたわ。ありがと2人とも」
「あれ、ルーシィオイラは?」
「そーね、ハッピーもありがとう」
「あい、お疲れしたー」
「つーか…今日は本当、疲れたな」
「ルーシィってこんなもてる奴だったっけ?」
「ちょっと、それなにげに失礼」

2人が疲れたと言うのも無理はなく。
あの店を後にしたあとも、今ここに帰ってくるまで、二桁には余裕で達する人数の男がルーシィに寄ってきた。
2人が目を離した隙だったり、2人の目の前だったり、そのたびに同じ事の繰り返し。

「まぁ、やっぱりいつものルーシィが一番だな」
「グレイ、何それ」
「俺もそー思うぞー。たしかに今日のルーシィ可愛かったけど、やっぱいつものでいーよな」
「オイラもそう思うよ」

「…そう?ま、あたしも疲れるし…そうよね」

「そうそう。で、疲れたから飯作ってくれ」
「何それ!?」
「俺もナツに賛成ー」
「グレイまで!?」
「オイラ肉食べたいー」
「さ、魚じゃなくて?」
「いーだろ?な、ルーシィ。肉くおーぜ肉」
「…しょうがないわね。今日はあたしも付き合って貰ったし、お礼ってことで」
「やったぁー!!」
「あ、ちょ、ナツ!生肉食べないでよ!」
「…腹減ったー…」
「生肉食べるお前の腹が気になるわ俺…」



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