Battle Aces in the Skies

□Prologue1 ひだまりの訓練所 かったるい日常
1ページ/4ページ

鳥になれたらなぁ……

日々、それを繰り返し思いそして呟くわたくし、ジェレイド・ハイシェンの生活は、一般的な生活水準で過ごしながら、口やかましい教官達に鍛えられる空軍アカデミー暮らし。普通とはちょっとかけ離れるけど、安息で一般的な日常を送る毎日。平和な日々を過ごせるのは何よりも幸運だとは思うけど、今ひとつ物足りない。スパイスとパンチがハードに効いた刺激が足りないのだ。刺激を求めるあまり毎日軽く鬱になり、果ては暇潰しに嫌いな教官に悪戯をしてはお小言を貰い、基地構内3周という罰則をプレゼントされる。罰則を終えたあとは決まっていつもの場所…展望台の屋上で呟いているのだ。

鳥になれたらなぁ……、と。

得てして何をすればいい?それもその筈、こんな辺境の片田舎で何が出来るんだ?見渡せば山と山、歩けば畑と老婆。走れば隣にやかましい干物…もとい我が教官殿。干物のようにガリガリで痩せ細った体型をしているから訓練生内ではそう呼ばれている。本人へそう呼ぶ者は居ないが、俺の悪友は教官の理不尽な指導にブチ切れてそのタブーを教官室中に爆声で悪態をついていた。あの日は揉めに揉め大乱闘が勃発した。
18にも満たない学生がブランデーのボトルを持ち飲酒しながら、教官室で干物とランデブー……て言うか殴り込みと言った方が似合っている。喧嘩上等!!そう言う奴だから、バカをやってのける。最も本人がバカだから仕方ない。乱闘が収まってから悪友に言い渡された罰則は、2週間の飛行停止及び毎日基地周り30周と雑務、並びに1ヶ月間の独房入りだった。悪友にしては素直に了承したようだったが、悪態だけはまだまだ続く。気の無い返事で軍人ごっこしている教官達や、ずぼらで肥満な基地司令官を舐め回すような態度だった。その面構えを俺はよく覚えている。何せその状況を窓からデジカメ撮影したのだから。半目になりながら他人を舐め回し、鼻をほじくっている間抜けな悪友とイラつきと脂汗が湧く基地司令は俺の格好のターゲットだった。だがバシバシと連写していたところを干物にロックオンされると、付いて来た仲間は散り散りに逃げ回った。まるでこの世の終わりの様に。だが教官達もバカであっても一応鍛えられた軍人だ。策を講じて俺達を追い回す。デジカメのデータだけは守らないと――。メモリスティックを抜き取り基地ナンバー1パイロットのティハルに預けて猛ダッシュ。
階段を駆け下り、廊下を全力疾走していた矢先だった。何かが急に振られて喉仏をジャストミート。俺は意識朦朧状態で捕獲された。その傍らで「痛ってぇ…」と叫びながら細い腕を上下に振る干物の面は苦悶の表情をしていた。ざまぁーと思いながら捕まってデジカメ没収。そしてお約束のお小言と基地5周のロードワークをプレゼントされた。その珍事は口コミで広がり、現役パイロットや女性士官達の話題になった。俺達よろしくクソガキ訓練生が基地周りを走っているところは日常と化していた。「又、走らされてるよぉ」とクスクス笑う女性士官達。しかも指まで差されて。もはや基地のお荷物かと思いきや、悪友殿は両手を振って有名人状態のアピール振り。遂にラリったか…と思ったが、女性士官達は「頑張って」と愛嬌ある笑顔で応えたのだった。ズキューーーーーーン!!だったに違いない。もの凄い雄叫びを上げながら全力疾走する悪友達。あの笑顔にヤられたようだ。甘酸っぱい青春路線まっしぐらとでも解釈しておこう。しかし、俺を含む少しはまともなクソガキ訓練生軍団は、200m走った当たりで力尽きた漢達を見てしまった。
その光景に手を合わせて祈る者も居れば、敬礼している者も居た。現実を直視すれば解ることだ。営業スマイルでからかわれた、と。仮に彼女らが本気で応えた言葉だったとしても、体力の無駄遣いをするには至らない。知らずに真に受け止め逝ってしまった仲間達は、後からバイクで付いて来た干物に絞られていた。行き倒れになった仲間達を。俺は盛大に溜息を吐き後ろを振り返る。仲間がバカでも見捨てて走り去る大バカじゃないので。干物に蹴飛ばされている仲間を見るのが嫌い?まあ奇麗事だってことは解っている。だが無抵抗な訓練生を蹴飛ばすなんて教官だからやっていいとは限らないだろ?

軍人"ごっこ"しかできない連中に空は似合わねえ、下克上するのはさぞかし気分が良かろう…先ほどのエルボーは効きすぎだったぜ?乾物野郎!腹からこみ上げてくる煮えたぎった復讐の炎が目をちらつかせる。いや待て!ここで問題を起こすよりも、


(C)Battle Aces in the Skies.
(C)蒼穹を舞う者 舞い上がる翼.

次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ