Battle Aces in the Skies

□Prologue2 終わる日常 甘い香りとモンスター
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朝っぱらから爆音が響き渡るこの基地にも、くそったれ教官の理不尽指導にも慣れてきた毎日(慣れようとは思わないが)に、欠伸を垂れる俺の横顔は何とも間抜けな面をしていた。デブったバーコードに目もくれず講義そっちのけで空を見上げていた。コクピットに収まり切らなくなった経験者の話を聞いても今ひとつ信用に置けないのが一番の理由だった。つまりは上の空だが、ただ単にそうなった訳ではない。――数日前に遡るが、干物教官ことファリエス中尉とデブったバーコード…ブナー中尉を残して、俺が教官として認めない連中は地方へ飛ばされた。結果だけ見れば、上の空になる俺の方がどうかしている。邪魔者が居なくなった事で清々する筈なんだが、却って退屈していたのも事実だった。それが決め手となり、張り合いがなく余計詰まらない日々が訪れたのは言うまでもなく、今日に至るわけだが。ノートは真っ白、教科書にメモも無く新品同様。清々しい空を見てると、うたた寝したくなってきた。講義をサボっているのか?と訊かれると答えようにも言葉が見つからない。別にサボっている訳じゃない、考え事をしてるだけだ―――

俺の頭が何かで殴られた。しかもかなり痛い。強かにぶつけられた感じだ
俺は振り向きざまに愚痴をぶつけた。
「何しやがる!?てめえぇ!!」
振り向いた先にいたのは、ブナー中尉が教科書の小口を捕まえて立っていた。どうやら教科書の背で俺を殴ったらしい。ふつふつと怒りが沸き上がったところでブナー中尉が口を開いた。
「講義そっちのけで居眠りとは余裕だな、ジェレイド・ハイシェン?んん、又何か悪知恵を働かしてたんじゃないだろうな?」
透かした鼻っ面にストレートをぶち込みたかったが、脂肪が邪魔して威力が半減すると思い、俺は言葉で攻めることにした。
「こんな講義聞くまでもねえよ。下手なてめえの講義を聞くより、教科書を読めば事足りる。つーかよ、コクピットに入れないバーコードに教わったところで、どうなるってんだよ?時間の無駄だぜ。現役のティハル中尉に代わって貰った方が良いんじゃねえの?その方が俺達にとって有益だと思うけど」
ここまで早口にまくし立てながら、身振りしながら答えると、プライドだけは他人以上に高いお坊ちゃま教官は、こめかみどころか、でかい顔の至る所に血管を浮かべていた。低知能だが、俺の言った言葉が分かる知能は持ち合わせているようだった。
ブナー中尉は「ふん!」と鼻で愚痴って明後日の方向へ振り返り、黒板まで足早に去った。言い返す言葉が見つからなかったのだ。突っかかって来た割にはあっさり負けて、俺としては本気で張り合いがなく詰まらん時間だった。お坊ちゃまで思い出したが、ブナー中尉は高官である父親の推薦で入隊した、俺に言わせば出来損ないだ。大した実力もないくせにプライドだけは人一倍、いや十倍…百倍はあるという自分の行いに対して自覚がない人間だった。シミュレータやゲームで負けると、直ぐ機械のせいにするなど、この前ティハル中尉にシミュレータの勝負をふっかけては、1分持たなかったくらいだ。その程度の実力なのだ。いや実力以前に士官学校からやり直した方が良さそうだ。或いは退役するか。いずれにせよ俺や悪友達にとっては目障りな人間に違いなかった。

(C)Battle Aces in the Skies.
(C)蒼穹を舞う者 舞い上がる翼.


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