独立への戦火

□Heart,beat,soul,"Rock'n'roll!!"
1ページ/3ページ

14:45 シュラウド基地 食堂

お昼の時間に昼食を済まそうとする者はいない。なぜなら全てが業務によって変動するからだ。皆が皆、定時の昼食を取ればどうなるか?答えはレーダーの見落としで侵犯機や不審機を見落としてしまったり、離着陸態勢に入った機体の誘導補助の怠慢に繋がる。実にシンプルな理由により、休憩は全てシフトとなる。但し、パイロットは異なるという但し書きが付く。そういう事で多少ざわつきはあるものの食堂には20〜30名の者しかいない。食事に掛かる費用は一定額を支払えばおかわり自由という全てセルフサービスというシステムになっている。だが小食な者にとっては、邪魔もの以外の何ものでもない、目上の瘤だ。という事もあり、いつ頃からかは分かりかねるが、ミドルプラン、ライトプランなるものが出来ていた。お陰様で食堂の進化した価格システムは、シュラウド基地で働く全ての職員に大好評を喫していた。その中でも女性職員には受けが良かったりする。女性職員以外にも、客観的に理数系の細身な男性職員にもウケがいい。ムキムキ系にはそんなシステムは関係無いという豪快な人物が多い。
敢えて例を挙げるなら、エンジェル小隊の4人だ。エンジェルとは口が裂けても言えない豪傑な3人の野郎と部隊紅一点の可憐な天使1人で構成されるこの小隊は、シュラウド基地一の鉄の胃袋を持つ。また、フラッシュ小隊のバカとルーキーもこの部類に含まれる。平時とテンション上昇時の差が激しいが、ただ飯なら底なしの胃袋と無限の消化酵素を持つ、ただならぬ漢たちだ。ある意味「食欲バカ」とも言う。だが、その連中はこの場にいない。今頃はきっと雲の上でダンスでもしてるだろう。訓練の名目で急遽開催が決定したDACT戦、多数隊多数のチーム戦を行う…との事。パイロットも暇じゃない。いつ何時、敵が攻めてくるのか分からないのだ。勘を鈍らせない為にも、個人や部隊としての技量を図る事を前提に行われている。それに伴って滑走路への侵入を許可したのは管制官だ。今食堂にいるのも数名の管制官である。朝から通しで昼過ぎまで体に何も入れてないと、空腹で狂人と化してしまう者もいたので、数班によるシフトで食事休憩をしている。パイロットとの入れ違いでもある。

管制官の中にも、眼をギラつかせながら大食らいする者もいる。
先のエンジェル小隊やフラッシュ小隊程ではないにしても、一皿にこんもりと盛られたセルフの料理は見ているだけで「ごちそうさま」宣言をしたくなる。普通なら分けて入れれば良いだけの話だが、その者たちに普通の常識は通用しない。皿を4つ程全てくっ付け角丸長方形の様に使用していたのだ。それ以外にも皿を使わず配膳に盛る者もいた。余程でない限り「手段を選ばず」的なアホな使い方はしないが、逆に使っているところを見ると相当腹を空かしているようだ。だがそれ以前に品性が欠けている。バカで名が通るフラッシュ1でさえしない行為をしているのだ。端から見た他人は呆れるしかないだろう。
「マイトってさあ…………知能レベルはチンパンジー並?」
「はあぁ!?突然、何言い出すんだよ?キズキ」
「や、だってそれ……誰がどう見てもアホっぽいよ?皿4枚セロテープでくっ付けるって、頭ん中沸いてんじゃないの」
「うぐ……」
キズキ・シュレイズ、一般的に温厚な性格と爽やかさを持つ好青年だが、他人が大変、変なことをしているのを黙って見過ごせない男である。プラス毒を吐くときは容赦ない。
その傍らで変なことをしていたもう一人の青年、マイト・ブランチャーはいろんな事に対して何でもこなせる美点がある。しかし基本的に大雑把な性格。この性格のおかげで今もキズキの毒舌攻撃を受ける羽目になった。
「キズキぃ、こいつは頭が沸いてるんじゃない。ただの単細胞だ」
強調と断言。言い切った瞬間であったが、この一グループで固まっていたメンバー達は、彼に対して白い眼差しを向けていた。じとーっとした、滑った事で起こる周りの反応。ただ言われた本人としては黙っていられない。
「おいエド、能なしのバカに単細胞呼ばわりされる筋合いはねえぞ!!大体てめえこそが単細胞だ!!」
「んだとコラ!もういっぺん言ってみろ!!」
「あぁ!?配膳に盛って手掴みで食うゴリラだっつってんだよ!!てめえは!!」
血気盛んな罵り合いが続く中で「エド」と呼ばれた青年、本名はエドガー・ビル・ゲロツェ。御承知の通りバカだ。だがフラッシュ1にはないバカさ下限を持っている。
この激しい口喧嘩は罵詈雑言……という形で収まれば良いのだが、最早言っても聞かんレベルの取っ組み合いにまで発展した。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ