独立への戦火

□序章 日常の最中、散発する紛争
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スターチア共和国とヴェル王国−−−−。

この二つの独立国家はかつて一つの国であったが一世紀前、当時のスターチア地方が独立を宣言し、主権国家となる。
しかし、ヴェル王国側はその容認を拒否。

その後両国の間には常に緊張感が漂い冷戦状態にあったが大きな衝突には至らなかった。

ところが昨年、豊富な鉱物資源によって潤沢な財政状況にあるヴェル王国が、突如としてスターチア共和国に軍事侵攻−−−。

以来、局地的な戦闘が散発する状況が続いていた。




2008/6/4 13:02 シュラウドの町郊外の上空

−−青いキャンパスにあるのは雲。
白。グレー。色はこの2色。
空気中の水蒸気が結集し発達した巨大な積乱雲。今にも地に落ちそうな低位置の雨雲。そして、その上からいつもと変わらぬ太陽が眩しい光を放っている。時々襲う乱気流が無ければ、視界良好で今日は良い哨戒日和だ。
《シヴァン・アイより各機へ。状況を報告してくれ》
無線から哨戒機シヴァン・アイより通信が入った。
《こちらエンジェルリーダー、異常無し》
《2だ。異常無し》
《3よりシヴァン・アイへ。敵影は見当たりません》
エンジェル隊の返信が終わる。しかし今日は護衛機も兼ねてもう一機、哨戒に就いている奴が居るが………あれ?
《フラッシュ1はどうした?状況報告してくれ》
再度、通信が入る。
「……ん?あぁ、すみません、特に異常無し」
ぼおっとしていたようだ。
「どうしたの?」
不意に後ろから声が聞こえた。
いや、複座機なので当たり前か。
1の様子を察知して後席に座って情報解析中だったサイバー・レイからの質問だ。
「ああ、何となく……見とれてた」
見とれてたと言えば“何”に?となるが、正面には空しかないので、それだろう。
《ははは、綺麗な蒼穹の世界に見入ってたんだろ?》
シヴァン・アイが茶化す。
「そうかも」
フラッシュ1が曖昧に答えた。
《空も良いですが、大地も綺麗ですよ》と、これはエンジェル3。
「確かに……いや待てよ」
エンジェル3の言葉に肯定したが、地上付近で白線を引いてシュラウド基地へ向かう機影が見えた。
「そうでもないぞ。地上付近で敵機確認!真っ直ぐ基地方面へ飛行中!」
1の言葉により場の雰囲気が変わった。
《何ぃ!?ちょっと待てっ……OK、こちらでも確認した!》
レ―ダ―の感度を上げ、シヴァン・アイが叫んだ。
「全機、All weapons free!アタック!」
6/4 13:15 シュラウド基地


ビ―――、ビ―――、ビ――……。
「敵機接近!敵機接近!11時の方向にヴェルの戦闘機!総数12機!距離40km!各員迎撃態勢をとれ!戦闘機隊可動全機緊急発進!!…繰り返すーー」
管制官の声がスピーカーを伝い、シュラウド基地中に広がった。
格納庫が次々と開き、待機中だった戦闘機が続々と誘導路を走る。

緑の山々から姿を現し、編隊を組むヴェルの戦闘機“F-15C イ―グル”と“F-15E ストライクイ―グル”。イーグルは機動性の良い戦闘機。
対して、ストライクイ―グルはイ―グルの攻撃型だ。

ビ―――、ビ――……。
鳴り止まないサイレンをよそに、管制塔は突如現れた戦闘機にパニックしていた。
「何故、こんなに近づくまでヴェルの戦闘機に気づかなかったんだ!?」
副司令らしき人物が慌て叫ぶ。
それに対して管制官は……
「超低空侵入によりレーダ―の死角を突かれました!!」
「ぬうっ……!!」
焦る副司令の隣から冷静な声がした。
「SAM(地対空ミサイル)発射!!」
司令だ。
「SAM発射っ!!」
管制官が復唱した。
ボンッ!シュゴッ!
滑走路脇に停車したSAM車両から勢いよく4発のSAMが発射された。
白い煙を吹きながら敵機へと吸い込まれていく。

ピ――――…。
管制室に設置されたレーダ―画面で敵機を示す光点が消え、レーダ―監視員がその旨を伝える。
「3発的中残り9機!!…最終防衛ライン超えました!!来ます!!」

敵機2機の翼下からミサイルが落ち…シュバ!…白煙を吹いたミサイルが滑走路に向けて飛来した。

ドゴッ!!

滑走路中央部に弾着した。
「第一滑走路が分断されました。戦闘機隊間に合いません!!」
管制官が瞬時に状況報告。
「くそ!哨戒の連中は何をやってるんだ!!やられるぞーー」
副司令の愚痴と叫びが管制室内にこだまする。
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