Battle Aces in the Skies

□Prologue1 ひだまりの訓練所 かったるい日常
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もっとずっと良い方法があると思い付いた。立ち止まった俺に親友は怪訝な眼差しを向けていたが、俺の顔に笑みが灯った瞬間に穏やかな表情に変化させた様だった。

ハイエル・マストーク・ワインディッヒは、歴とした名家ワインディッヒ一族の御曹司である。悪く言えばお坊ちゃま。父親が陸軍少将と来たら、もう……だが、他人に自分の人生を決められることをより嫌う傾向にあり、親に反発して空軍士官学校に入校した。入校当初から黄色い声に包まれていた。それもその筈、ワインディッヒ家の末裔だ。女性がほっとくわけにも行かない。しかし、本人にその気は無くいち早く空を飛ぶことを夢見ている俺とよく似た人種だった。ああ、性格だけは別だ。だが悪友の俺が言うのもなんだけど、悪戯を思いついた彼の面ときたら、冷気と笑みでいっぱいだった。

その彼が俺の考えを見透かしたかのように、肩を叩いてウィンクした。"とりあえず仲間を助けよう"その思いが込められていた。先ほどお祈りや敬礼をしていた仲間達も首を縦に振って合意のサイン。俺も首を縦に振りそして逆送を開始した。
雄叫びは上げないが、無心に強面の笑みで走り出す少しはまともな悪ガキ共は、端から見ていて恐怖と奇妙な集団だったに違いない。干物目掛けて我先にと攻撃を加えようとしていた。おい、目的はそっちじゃねえぞ!?と思いながらも口元が緩む俺。日々の憂さ晴らしか、仲間の救出か、何れにせよ止められない。無論、止めようとは思わない。この勢いを利用して干物に突進した。ゴリラのようなゴジラのような肉体派の2人が袖口を捲り上げて干物へ突進していく。それに気付いた干物は戦慄を覚えたに違いない。身に迫り来る猛り狂った屈強な悪ガキを見て。恐怖。恐怖。そのあまりにも恐ろしい光景に体が竦み、逃げようにもバイクのキックスターターが思う様に起動しなかったことを見れば、当然だろうけど。いつもの威勢の良いくそったれな態度は何処へやら、だ。その面影すらなく、干物へ到達したゴリラっぽい悪友は勢いを利用してエルボー。ゴジラっぽい悪友は左ストレート。そして集団中バカ2番手がドロップキックをかましていた。着地に失敗し手首を捻って奇声を発してたが。こいつはある意味怖い医務室送りだ。まあ目的は達成した。
担いだ仲間にはヤキを入れずに貸し1にして、その場を後にした。

――気分爽快!…そうなのかい?と言われると、後がウザいだろうなあ…お小言と罰則で済めばいいのだが、下手すりゃ首が飛ぶ。3発のコンボ技が見事に決まりバイクごとひっくり返った干物。鮮血が毒々しく彼の頬を伝っていた。だから少し怖いのだ。マイナスイメージを止めて前向きに考えるのが俺達悪ガキ集団の唯一の取り柄だった。取り敢えず「目には目を、歯には歯を」…干物の行為をそっくりそのまま証言すれば良い話だった。

如何にもレトロで古ぼけた司令室には、司令官と教官達+干物、そして俺達悪ガキ集団20名がその場で睨み合っていた。勿論、これには訳があってヤンキーがいけ好かない教官に「ガン垂れる」のと同義だ。わたくしジェレは、軽く鬱になり別の事を考えていた。鳥になれたらなあ、だ。
「…と言うわけで全員、独房入り2ヶ月と罰則に伴い、毎日グラウンド50周及び雑務に励んでもらう!以上だ!!質問は?」
肥満で脂汗を垂れ流す高慢稚気な司令官が、俺達の行為に稚拙な処分を課せたようだ。これからかったるくなる、と思っていた矢先、納得の行かない悪友達は我先にと手を挙げた。
質問を促されたのだから質問をするのは明白だ。司令官はご指名に手間取っていたので、待ちきれないとばかりに一歩踏み出し喋り出したのが、乱闘珍事の当事者だった。
「そいつ(干物)の処分も納得の行くよう説明してくれるんだろ?」
「な…無礼な!!上官だぞ!?立場は分かってるのか?」
「俺はこの司令に質問してんだ!!すっこんでろ、三下!!」
「なんだと、糞ガキが!!」
「静粛に!!……ファリエス中尉の処分についてはこちらで検討を重ねた上で下す。以上だ」
司令が一喝して答えたが、それはそれで火に油の回答だった。
「今答えろ!!ハゲェ!!」
「そんなの回答になってないぞ!!」
仲間達が激怒するのは無理もない、それ程ありきたりな回答だったのだから。その場しのぎにしか聞こえないくそったれ司令官の御言葉。その一色即発状況をよそに、俺は無意識に違うことを口走っていた。
(C)Battle Aces in the Skies.
(C)蒼穹を舞う者 舞い上がる翼.

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