独立への戦火

□Heart,beat,soul,"Rock'n'roll!!"
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「ちょ、ちょっとあんた達止めなって、んもうホント男ってバカなんだから!?ってキズキぃ、止めないの?」
「んー……毎度の事ながらよくやるよね?あの二人」
「ぇと…キズキ?……何言ってんの?」
二人の仲裁に入ろうとキズキに助けを求めた女性、クレア・リスティニー。だがキズキは唐突に話題を変えて話し掛けるように答えた。クレアは意味が分からないという風に固まっていた。
「なんかもう、小さな事で同じ争いを繰り返すからさ、止めるだけ体力の浪費だってこと」
「……」
「止めなくていいよ、クレア。毎度のレクリエーションは止めるより観戦した方が面白いし」
「…本気なの?」
「僕はいつも本気だよ。バカの争いを止めるだけ無駄。割って入って憂き目を見るよりも、バカバトルを観戦した方が面白いって事。止めるなら相応の力を持った人間が必要だよ」
キズキの本音は的を得ている。小さな事から始まった些細な争いは、罵詈雑言と壮絶なバトル、そして過去の忌まわしき事例も含めて喧騒は拡大した。二人の喧嘩は掴んで捻ったりといったレベルじゃない。マイトは元特殊戦術実戦部隊出身で、エドは全身全霊が揮発する程熱きハードロッカーだから、殴る蹴るは当たり前。
締め技、突き技、獲物を持って容赦なく薙払うといった軍隊らしい闘い方だった。戦闘において「やらなければ、やられる」という言葉があるように、管制官であろうと、相手にやられないように先手先手で襲い掛かる事はある。両者共に先手を撃つからこそ今の争いは長引いている。この争いに仲裁するため入っては命が幾つあっても足りないだろう。それが分かっているからキズキは仲裁しないのだとクレアは悟った。
「……それもそうね」
そう呟いてクレアは食事の席へと戻った。
「あのさ話変わるけど、あいつらのスタミナってパイロット並だよね?神経尖らせてレーダー画面と睨めっこしたすぐ後に、あれだもん」
話題を変えたのは、見た感じパイナップル頭のイグノア・カルチョだ。他のテーブルではさっさと避難して驚きの表情を隠せない者たちが多かったが、彼だけは妙に冷静に話題を変えてきた。しかも、そのテーマは二人の身体的な、精神的なスペックについてだった。だが確かに一理ある。朝からぶっ通しで昼下がりまで業務に励むと、体は疲れている筈なのに微塵も感じさせない壮絶バトルを毎度のことながら繰り返しているのだ。
レーダー画面やPCのモニタから直接くる光の色温度は約9300ケルビン(K)が主流だ。6500K〜5000Kに落とせる物もあるが、たいていは9300Kある。この色温度は澄み切った青空に輝く正午の太陽光(6500K)よりも強い紫外線や電磁波を数時間浴びることになる。PCで長時間の作業を行う場合は、適度な休憩が必要と言われているのはその為だ。余談だが旅客機が飛ぶ高度10000メートル(m)上空は12000Kに達する為、体は被爆すると言われている。
「そりゃ、どちらも似た部類に入るからじゃないのか?」
「ま、そういう言われるとお手上げだけど………」
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