企画小説
□秘密のあそび
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【18歳(高校生含)以下閲覧禁止】
『――ねぇ、君』
「…おれ?」
『そう、君だよ。お名前は何て言うのかな?』
「静雄…」
『静雄くんか!じゃあ静雄くん、おじさんと遊ぼうか』
秘密のあそび
これは、俺が小学校に入ったばかりの出来事。
「――…でもおれ、もうかえらないと…」
『帰るの?何か習い事とかしてるのかな?』
「してない…」
『そう、じゃあちょっとだけ。ね?』
明らかに怪しい男だった。
父親よりも年齢は上だったと思う。
誰だろうとは思いながらも、俺がガキの頃は今で言う変質者的な存在は少なかった為、疑ったりなどしなかった。
大人からそう言うものの類いに関して注意されたこともなかったし、学校の担任が注意することと言ったら事故や怪我が殆どだった。
つまり、俺はこの頃、変質者という存在も知らなければ、何故学校の敷地内に怪しい男が居るのか理解できなかった。
『じゃあこっちにおいで』
「どこ、いくの?」
男は俺の手を引いて、今の時期は使われていない野外プールへ連れてきた。
『さぁ、着いたよ』
「プールであそぶの?」
『そうだよ』
「でも、さむいし…かってにはいったら先生におこられる…」
『うん、だからおじさんと静雄くんの秘密だよ?』
その男の秘密という言葉に子供の俺は酷く惹かれた。
「ひみつ?」
『うん、お父さんやお母さんにも内緒』
「幽にも?」
『うん?』
「おとうと!幽っていうの」
『そう。幽くんにも絶対に言っちゃダメだよ』
「うん!」
その男はにっこりと笑うと普段は鍵がかかっているはずのドアを当然のように開けて見せた。
『さぁ行こう』
「うん!」
――…カチャン。
俺は男に会ったときの不安など忘れ、男に完全に気を許してしまっていた。