SS

□毒にまみれた感情
1ページ/4ページ


――ザーーッ!!



「ゲホッ…ゲッ!ぅ…ッ、…カハ!!」
「静雄…」
「っ、ハ…。新羅か…」
「もう止めなよ…見てられない。いくら君の体が丈夫でも毎日そんなに毒を…」
「良いんだ」
「静…」
「良いんだ…」






これも全部アイツの、臨也の為だから…。























にまみれた感情





















「――ねぇ新羅、シズちゃんの様子は?」


ある一国の王である臨也は、側近の新羅に尋ねた。


「良くはないよ。神経系の毒に発熱…。今は部屋で休んでる」
「そう…」


シズちゃんというのは、所謂静雄の事だ。
臨也だけが彼の事をそう呼ぶ。


「流石に余裕とは言えないみたいだけど、君の毒味役を辞める気はないらしい」
「だろうねぇ…」


静雄は臨也の毒味役だ。
本来毒味役とは、死に至らしめるほどの毒を盛られるため、使い捨てが普通だろう。
毎日毎日、毒味役が死ぬ。
まともに安心して食事なんて出来ない。
臨也はうんざりしていた。

そこに幼馴染みの静雄が名乗りを上げる。


『俺が、やってやるよ』
『シズちゃんが俺の?そんなに早く死にたいわけ?』
『お前を殺すのは俺だ』


静雄の突然の申し出に、誰もが目を丸くした。




この国は…いや、臨也は何かと敵が多い。

彼は天才的な頭脳に、富も駒も持っている。
だが、自分の国は蚊帳の外というように、ほぼ戦争には参加しなかった。
そうなるように最低限の駒だけで戦争を回避し、挙げ句の果てに他国同士を戦争に追いやり、武力を失わせた。

あまりにも力を持ちすぎた彼の国は、他国からは危険分子として恐れられ、一国の王として彼は、狙われるに十分な存在だった。


そして、静雄も純粋に臨也の命を狙う内の一人だ。
静雄は臨也が王とは関係なく、臨也自身が嫌いだった。









「…シズちゃんはさ、俺の事好きなのかな?」


楽しそうに問いかける臨也とは反対に新羅は首を振って答えた。


「逆でしょ。君の事、大嫌いだってさ」
「ふーん、別に良いけど」


冷めた料理を口にしながら、臨也は考える。
それでも、静雄は自分のモノなのだと。




次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ