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□輪廻転生
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次の日の夜、新羅から連絡を受けた静雄は再び新羅の家で臨也について話していた。
「どういうことだ?確かに俺には奈倉って…」
『…まぁ事情があるって言ってたからね。深くは詮索しなかったけど、ちょっと違和感があったんだよね』
「違和感?」
『なんとなくだけど、この時代の臨也は僕達が知ってる臨也に比べて嘘が下手みたいだ』
「あぁ…言われてみれば」
『やっぱりあの臨也とは少し違うのかな…見た目はそのままだけどね』
確かに静雄自身、昨日の臨也の発言は嘘だと簡単に見抜いていた。
自分の知っている臨也なら、そんなことを匂わせるなんて絶対にありえない。
折原臨也と言う人間は、決して他人に弱味を見せる男ではないのだ。
『彼が何を隠しているのかは知らないけど、この時代の臨也と僕達はつい最近知り合ったばかりだからね。ただ単に警戒してるのかもしれない』
「そうか…」
『元気出しなって!臨也の事だから、記憶なんて直ぐ取り戻すよ。臨也の事は君が一番よく知っているだろう?』
確かに昨日は新羅の名前を呼んでいた。
そう考えると臨也が記憶を取り戻す可能性はゼロじゃない気がする。
この時代の折原臨也は、俺達の知っている折原臨也ではないが、間違いなく本人なのだ。
「そうだよな…」
前向きに考えると気持ちが楽になった。
ただ、臨也の記憶が戻ったとして、俺はその後どうするのだろうか…?
臨也と、俺は…。
俺達…、は…?
あれ…、記憶が曖昧だ。
俺と臨也は…、
恋人同士……
だよな……?
「なぁ、新羅…」
『ん?』
その疑問をぶつけようと口を開く。
自分がその事実を覚えていなくても、かつての親友は知っているはずだ。
簡単だ。
『俺と臨也は付き合ってたんだよな?』
たったそれだけ。
それだけなのに…それが、何で聞けないんだ。
理由なんて簡単だった。
言葉にするのが怖い。
もしそれを否定されてしまった時、今生きている俺は臨也を追い続ける理由が無くなってしまうような気がして。
俺達は、…?
俺は………。
「新羅…俺…」
一つ言葉にする度に、目頭が熱くなってくるのが分かる。
「俺、アイツに会えて…すげぇ嬉しい」
今更、そんなことを知った。
答えなんて、必要ない。
俺は臨也が好きだ。
アイツが生きていて、俺の気持ちが確かならそれで十分だった。
24年間、ずっと無意識に探していた相手。
想いの強さが、やっと届いた気がした。
ただ、もし臨也の記憶が戻ったら…、望まなくても結果は着いてくる。
結果がどうあれ、改めて自分の中で全てを受け入れる覚悟を決めた。
『そうだね、僕も嬉しいよ』
いつの間にか涙が溢れていて、新羅に恥ずかしい所を見られたと、とっさに顔を手で覆って隠す。
『君は…』
何かを言い掛けたがそれ以上新羅は口にしなかった。
俺自身も自分の事で精一杯な状態だったので、それどころではない。
『…コーヒーでも入れようか。砂糖はいくつ?』
「3…」
『ふふ、ちょっと待ってて』
新羅がキッチンに消えたのを見計らって、シャツの袖で目元をガシガシと擦った。