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□輪廻転生
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一方で、臨也と静雄が再会する少し前、同じ池袋の街で動きを見せる人影があった。




若い女は、自分の上司にあたる男を探して池袋の街を探索していた。
仕事上、一緒に行動することが多いその男は極度の女好きで、気付けば姿を眩ますその男に若い女はいつも手を焼いていた。


今日も上部からの命令で夜の街へと繰り出してきたのだが、いつの間にやら自分の上司は隣にいない。
毎度のことなので、いい加減溜め息すら出なくなっていたが怒っていないわけではなかった。


「(――このままあの人を置いていっても良いだろうか…)」


だが、ここで諦めては自分も上部からのとばっちりを受けてしまう。
そんな面倒はごめんだ。

一つため息を吐いて、改めてすれ違う人々の顔を確認する。
いつも目立つような所で女の子をナンパをしているその男は今回に限って中々見つからない。
どうしたものかと携帯開いた瞬間、自分が立っていた場所の脇道から女性の悲鳴が耳に入った。


『きゃぁぁあああ!?』


場所が離れているせいなのか、その悲鳴に気付いた通行人は少ない。
だが、明らかに何か事件があったようなその悲鳴は、その声に気付いた者たちを不安にさせている。
顔を見合わせて何があったのだと雑談する通行人を尻目に、若い女だけは何も迷うことなく、その路地裏へと足を進めていった。

仕事のことでも、上司のことでもいい。
何か情報が欲しい。
駆け足でその悲鳴の元へと向かった若い女は、その悲鳴の理由らしき光景を目の当たりにして目を見開いた。

微かな血の匂いと横たわる男、それを見て青ざめる女性。


『…ぁっ…!?』
「大丈夫ですか?」
『あっ、はい…わっ私は大丈夫なんですけど、今男の人がいて…血がっ、ぁ…こっちの人も…!』


悲鳴をあげたであろう女性は酷く混乱しているようで、必死に状況を伝えようとしているのが見て取れるが、可哀想に体が震えている。


「大丈夫ですよ、大体のことは分かります。後は私が引き受けますから、貴方はこのままお家に帰ってください。顔が真っ青で見ていられません」
『で、でもっ…』
「大丈夫ですから、ね?」


とびっきりの作り笑顔で悲鳴の女性を安心させると、彼女はお願いしますと深々と頭を下げた。
最後に一言、救急車は呼んでおきました、と言い残し彼女はその場を後にする。


その一言で、若い女の作り笑顔は綺麗に壊れてしまう。


「…余計なことを」


舌打ちをして、明らかに苛立った様子で足を進めながら向かった場所は、横たわるチンピラ風の男の前だった。

若い女は完全に伸びてしまっているその男の体を揺らし、無理矢理覚醒させようと試みる。


「先輩、何してるんですか!?起きてくださいっ!早く任務を遂行しないと私まで怒られます」
「…ぅ、ぐ…」


綺麗な顔を歪ませ、若い女…ヴァローナは必死で上司である六条千景の体を何度も揺すり続けた。
そう、二人は今、上司と部下の関係なのである。


TO BE CONTINUED…




2010.11.06.〜
2012.02.21.(加筆、修正)
2012.09.15.(加筆)
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