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□輪廻転生
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「――…平和島…静雄、か…変なヤツだったな」


奈倉は帰路に向かう途中、静雄のことを考えていた。


「シズちゃん…ちょっと可愛すぎたかな、ふふ」


シズちゃんと呼ばれた時のあの顔…。
思い出すだけで可笑しくなる。


「俺に似てるとか…そいつも散々だね。ま、俺の方が顔も頭も良いだろうけど」


不意に奈倉のポケットから携帯がその存在を主張する。


「母さんか…もしもし?どうしたの」


内容は深刻なものだった。
一般的には。
ただ、奈倉にはどうでも良いことだった。


「そう…母さん達が決めたなら、それが一番良いんじゃない?別に俺ももう大人だし……うん、…うん」


電話の内容は両親の離婚。
そして、奈倉の将来を心配する母親からの電話だった。


「俺、親父の姓は捨てるよ…うん、謝るなよ母さん。俺は大丈夫だから、ね?」


電話越しに母親は何度も謝った。


何度も、何度も。


「今日から俺は『折原臨也』だ。『奈倉』は捨てる。俺はずっと、母さんの子だよ」


言い切ると母親はありがとうと、泣きながら電話を切った。

元々、奈倉と言う名前は好きではなかった。
折原臨也。
うん、今までよりずっといい。

これからは折原臨也を名乗ろうと決めた瞬間だった。


「あ…シズちゃんに奈倉で伝えちゃったな…。下の名前教えれば良かった」


まぁ次に会った時にでも言えばいいか。
本当に連絡が来るかすら分からないが。

そんなことを考えながら先程会った男について考える。


「…それにしてもシズちゃん…平和島静雄。どこかで聞いたような…」


思い出せない。
確かに初めて聞いたはずの名前なのに…。


「シズちゃん……ぁあ、頭痛い…」
 

突然、ズキズキと鋭い頭痛に見舞われる。


「…早く帰ろう」


この時は大して意識していなかったが、この頭痛が後に厄介なことになるのを臨也は知らない。



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