main2 戦国
□いろはにをえど、
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己の身に何があったかなど、すぐに知り得ることが出来た。
僕と同じ人間なのだと、冗談半分で囁き続けて来た竜の右目が、僕を葬り去るのだ。
運が良いのか悪いのか、僕のすぐ後ろには真っ青な海が広がる。
嗚呼、これでいい、散るなら、跡形もなく散ってしまいたい。
元より、そう永くもない命だったのだ、今更引き留めるつもりも無かった。
遺してしまう親友に−−−
いや、きっと彼も。
僕は最初からわかっていたのかも知れない。
これで終わる。
思えば少し辛い。
この世に未練なんてくれてやるつもりもなかったけど、僕は−−
君を、遺して逝ってしまう。
許してくれ、君は泣くだろうけれど。
僕を想って、声を嗄らすだろうけれど。
君を一人にしてしまう。
僕は愚かだね、こんなに辛いなら
最初から君を、
愛するんじゃなかった
嗚呼、いつの間に、こんなに愛してしまったんだろう。
『半兵衛様』
愛しい君。
もう一度、君に逢えたなら
『半兵衛様』
視界が反転する。
海を映したような、真っ青な空が見える。
君には、もう二度と逢えない
僕の手には、君の温もりがまだあるのに
いろはにをえど、
(もうお別れ、)
終わり
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