企画短編3

□だるまさんがころんだ
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お昼休み開始のチャイムが鳴ると同時に、校庭の片隅にある日当たり抜群のベンチ目指して猛ダッシュ。

寒さのせいか、流石に人は疎らで目当ての席を楽々ゲット出来た。

風は少し冷たいけど、その分太陽の光が暖かい。

ホッと一息吐いて、膝の上で広げたお弁当の中身はラッキーな事に全部私の大好物。


「珍しいな。お前が一人で昼飯なんて」


いつの間にか当たり前のように隣に座って、大きな欠伸なんかしてるのは腐れ縁二年目の奈良シカマル。


「しようがないでしょ」


今日はみんな委員会やら部活やらで、呼び出されちゃったんだから。
と、説明するのもめんどくさくて、私はお弁当を食べ始めた。


「お!美味そう」


食べ始めたばかりのお弁当に伸びて来た右手をぱちんと払いのければ、シカマルはお得意の仏頂面を空に向けた。


「いー天気だよな」


太陽の光に縁取られた整った横顔の輪郭。

黒く輝く一つに束ねた髪。

眩しさに細める目。


見慣れた姿なのに、何もかもが綺麗で思わず見惚れてしまいそうになる。

本人曰わく、オレは全然モテねーらしいけど、そうじゃないって周りはみんな知っている。

勉強は出来るクセに、色恋事には鈍感らしい。

だって、こんな近くに自分を好きな女がいるってのに、全く気づかないなんて、超が付くくらい鈍感以外の何ものでもない。



なんてぼんやりしてたら、目の前をシカマルの手が横切った。

あっ!と声を上げる間もなく、私の大好物はシカマルの口の中へ。


「ちょっと!なんで勝手に食べんのよ」


もぐもぐさせている口の中に手突っ込んで取り返したいけれど、流石にそれは無理。

恨めしげな私を尻目にシカマルは満足げ。


「美味ぇな」


調子に乗って、更にお弁当に手を伸ばそうとしてるもんだから、その手を思いっきりひっぱたいてやった。


「…っ!痛ぇ」

「最後に食べようって思って大切にとってたのに!」

「だ・か・らお前がさっさと食わねーのが悪ぃんだろ」


私はシカマルの両頬をこれでもかってくらいに引き伸ばしてやった。

普段からは想像出来ないくらい酷い顔に、私の怒りはどこかへ吹っ飛び、変わりにお腹がよじれるほど笑った。

笑われたのが気に食わないのか、シカマルはそっぽを向いてしまった。


静けさに堪えきれなくなって隣を見れば、ほんの数秒の間に寝息をたてて寝てしまっている。


そんな無防備な寝顔見せるなんて、反則だよ。



冬の気配を乗せた冷たい風が、一つに束ねた髪の毛先を悪戯に揺らしている。





「あー、よく寝た」


呑気に欠伸なんかしてるシカマルの横で、私は零れる寸前だった言葉を飲み込み、何事もなかったのように呆れ顔を作った。


「つーか、お前何やってんだよ」

「はぁ?何って、お弁当食べてたんですけど」

「だったよな。つーか、相変わらず阿呆面…」

「私の阿呆面は今に始まった訳じゃありません」

「だよな」


俯いて肩を揺らしながらくつくつと笑う姿を見て、言わなくて良かったと心底思った。


友達にいわせれば、私達は相思相愛らしい・・・


けれど、
本当は私の事どう思っているんだろう。

アイツの事が気になってしょうがないクセに、素直になれない。

だって悔しいじゃん。




だるまさんがころんだ
(先に心動かした方が負け)


end

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