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□秋茄子は…
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今日の任務も無事終了。
帰り際、近所の農家のおばさんに貰った大量の茄子を抱え僕は家路についた。

今日の夕飯は茄子で決まり。


腕まくりをして、エプロンを掛け、茄子を手に持ったところでふとある人の顔が浮かんだ。


「そう言えば…先輩もそろそろ任務が終わる時間かな」


先輩とはもちろんカカシ先輩。

茄子と言えばカカシ先輩。カカシ先輩と言えば茄子。
そう、茄子はカカシ先輩の大好物。正確には茄子の味噌汁だけど。

きっと今日も夕飯目当てにウチにやって来るに違いない。

先輩の事は尊敬しているし大好きだ。
がしかし、最近の先輩ときたら僕が断れないのを知って何かと面倒な事を押し付けて来る。たまにはビシッと言ってやらないと。

僕はある作戦を思いついた。カカシ先輩への密かな仕返しの作戦を…



茄子の煮浸し、茄子田楽に麻婆茄子。
そして極めつけの茄子の味噌汁。

出来上がったところで早速カカシ先輩の気配。


「よ!テンゾウ」


玄関じゃなく、部屋の窓から顔を出す先輩。


「カカシ先輩、そこは玄関じゃないって何度言ったら分かるんですか」

「まーいーじゃない。オレとテンゾウの仲だろ」

そう言いながら、既に手はテーブルの料理に伸びていた。

そうはさせまいと僕はすかさずその手をパチンと叩いた。

驚くカカシ先輩に僕はにんまり。


「何すんの!」

「これは僕の夕飯です!」

「こんなに沢山あるんだから、別にいーデショ」


再び伸びた手を僕は再度阻止した。


「先輩、秋茄子は嫁に食わすなって言葉知ってますか?」


恨めしそうに僕を睨みながら先輩はこう答えた。


「意地悪な姑の嫁イビリの言葉デショ。それがどうした?」


そう言うと、懲りもせず先輩は三度(みたび)茄子へと手を伸ばした。
もちろん僕はその手を勢いよく弾き返す。

何度も先輩の手を叩いている内に僕の中に、微かな快感が生まれているようで先輩の手を叩く度、胸の中がスッキリしていた。


「まぁ、そういう意味が世間一般的には広がっているんですがその他にも説があるんですよ。知ってますか?」

「いーや」

「それはですね…」


恨めしそうに僕を見ている先輩に、ここぞとばかりに僕はその意味を話し始めた。


「茄子は身体を冷やす作用があり、身重な嫁の身体には、冷えるのはよくないので、嫁には食べさせないという実際的な健康上の配慮からの姑の優しさ説もあるんですよ」


「ふーん…」


全く興味なさそうな先輩に僕は留めの言葉を投げる。


「つまりですね。僕は意地悪で食べさせない訳じゃなく先輩の体を気遣ってるんですよ。これからまだまだ重大な任務をこなして行くであろう先輩の大事な大事な体を冷やして病気でもしたらとんでもないですからね」


先輩を気遣う健気な後輩。これなら先輩も何も言えないだろう。

後は、先輩の前でこの茄子料理を美味しそうに食べれば、先輩への仕返し完了。

僕は心の中で小さくガッツポーズをした。


「そっか…」と呟いた後、先輩は俯いたまま。

僕の気遣いにそんなに感動したんだろうか。


「カカシ先輩?」


少し不安になって先輩の顔を覗き込もうとした瞬間、先輩は顔をむっくりと上げた。


「じゃあテンゾウは、オレが茄子を食べられないストレスで病気になるのはO.K.なんだ」

「え…?」


予想してなかった先輩からの反撃に僕は言葉を失った。


「茄子食べて体冷やすより、テンゾウが作った美味しい茄子料理を食べられないストレスの方がオレ的にはダメージ大きいんだけど…しようがないな。テンゾウがそこまでオレの事を思ってくれてるんだから」


そう言っている間にも先輩の目はうっすらと涙が滲んでいった。

先輩の笑顔にも弱いけど、こっちの顔にも弱い僕。


「しようがない…茄子は諦めて今日は帰る」


立ち上がった先輩の腕を僕はがっしり掴んだ。


「ストレスで先輩にハゲられたりしたら、それこそ大変です!どーぞ!好きなだけ食べて下さい!」

「いーの?」


コクリコクリと頷いた僕を見て、先輩は満面の笑みを浮かべテーブルの前に座った。


「じゃあお言葉に甘えて。あ、そうそう味噌汁冷めたから温めなおしてネ」


あぁ…やっぱり僕は先輩のこの笑顔に弱いんだ。


「テンゾウ!白いご飯もちょーだい」

「はいはーい」





「あーあ、ヤマト隊長またカカシ先生に遊ばれてるってばよ」

「私知ってる。ああいうのを手の平で転がされてるって言うのよ」


自らの身を持ってナルト達にいろんな事を教えてくれるヤマト隊長なのであった。


「しかし、この茄子…太いし、長いし、しかもテカテカ光ってて立派だな。ま…オレのには負けるけどネ。って、テンゾウ何ニヤニヤしてやらしい事想像してんの」

「ぼ、僕は別に!」



end
 

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