企画短編2

□感じていたい
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「…っ」


事の最中、彼女が一瞬苦痛の表情を浮かべ喘ぎとは違う声を漏らし、オレは動きを止めた。


「悪ぃ。痛かったか?」

「ううん。大丈夫」


彼女はすぐに笑顔を見せたが、さっきの声は悦びから出る声とは明らかに違う。


「無理すんなって」


任務を終え半年ぶりに帰って来た里。
もちろん彼女と会ったのも半年ぶり。

クタクタに疲れた体を引きずるように彼女の部屋に向かえば、玄関前でオレを待っていてくれた。

照れくさくて口では言えねーけど、久しぶりに会った彼女は最後に会った時よりもっと綺麗になっていた。

「おかえり」と笑顔で迎えてくれた彼女を抱きかかえ有無を言わさずにベッドの上へ。
疲れているのも忘れ無我夢中で彼女を抱いた。

そう、無我夢中で…

あまりに久しぶりだったんでつい力み過ぎちまった。

激しすぎたよな…



重なった体を離そうとすると、オレの首に彼女がするりと白い両腕を回す。


「このままがいいんだけど…ダメ?」


ダメっつうか、繋がったままのこの体勢で我慢すんのは結構ツラいんだけど…

潤んだ瞳で見つめられたら、NOなんて言えねー。

オレは覆い被さるようにして彼女を抱き締めた。

ぴったりと重なった汗ばんだ体は、さっきまでの激しさを物語るようにどちらも熱を帯びている。

汗で張り付いた黒い髪。赤らんだ頬。潤った唇。
彼女の全てがオレを興奮させる材料になって、彼女と繋がったままの下半身がまた疼き始める。

必死で我慢しているオレを見て彼女がクスリと笑った。


「んだよ」

「今のシカマルの顔。おあずけされてる犬みたい」


ムッとしたオレの尖らせた唇に彼女の唇が重なる。
すぐさま離された唇は、オレの首筋に埋(うず)められた。


「シカマルの匂いがする」

「オレの匂いって、汗臭ぇだけだろ」

「ううん。汗の匂いの中にちゃんとシカマルの匂いがする」


首筋でくんくんと鼻を鳴らしながら匂いを嗅ぐ彼女が可笑しくて、思わず喉の奥を鳴らすように笑ってしまった。


「お前の方が犬みてーだよ」


オレもお返しとばかりに彼女の首筋に顔を埋めれば、ふんわりと香る石鹸の香り。



長い任務の間、ふとした時に思い出していたのは彼女のこの香り。

オレの名前を呼ぶ声。

口付けを交わした時に残るリップの味。

柔らかい肌。


そして、笑顔。


どんなに長い間離れていても、オレの五感全てが彼女を覚えていた。

そして今、オレはその五感が覚えていた感覚を確かめるように腕の中の彼女に触れる。


長い髪、白い肌、薄紅に染まった唇、全てを感じたくてひとつひとつに口付けて行く。


「ちょ…シカマル…」


オレの名前を呼ぶ彼女の声は、さっきよりも艶めいていた。


「そろそろ再開してもいーか?」


ぽかりと拳骨を一度お見舞いされた後、彼女の腕がオレの背中に回されオレの唇は彼女の唇に塞がれた。


甘い口付けの後、二人はまたお互いを全てで感じ合う。




もっと深く
もっと奥まで

感じていたい

感じさせたい


end

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