novel
□短編2
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「怪盗からの予告状?イタリアのボンゴレ本部に?」
綱吉が学校から帰るやいなや、そんな知らせを持ってきたのはリボーンだった。
「そーだぞ。しかもご丁寧に盗む品物を予告状に書いてきやがった」
「へー。で、何が狙われてるわけ?有名な絵とか?」
「違うな。この怪盗はここ最近は宝石を中心に狙っている事で有名なんだ」
「ふーん。でもマフィアの本部に侵入しようなんて…勇気あるなあ…」
綱吉は現在高校1年生。
ボンゴレのボスは9代目から綱吉にバトンタッチしていて、本来なら綱吉がいろいろと指揮を取らなければならない立場なのだが…。
「まあ…本部には宝石を埋め込んだ家具もあったような気がしたからなあ…。狙われるのも納得かな」
セキュリティ厳重なボンゴレ本部に泥棒が侵入出来るとは思ってもいないようだ。
「何をどーんと構えてやがる。予告状が本部に届いたからって、問題の怪盗が本部に来るとは限らねーぞ」
「どういう事?」
「予告状を送ってきたのは国際指名手配中の怪盗1412号だ。コイツの通称くらいはお前でも聞いた事あるだろ。日本でも有名だからな」
「もしかして…怪盗キッド!?」
「当たりだ。しかも狙われてるのはボンゴレリングだ。キッドはリングを1つずつ奪っていくつもりらしい。気をつけろよ、ツナ」
こうして、綱吉とその守護者達は世間を騒がす怪盗キッドを警戒する事になってしまった。
「リボーンは気をつけろなんて言ってたけどさ。その怪盗キッドって、ボンゴレリングが日本にある事や今の持ち主の身元とか知ってるのかな?」
翌日の放課後。
綱吉の号令の元、雲雀と投獄中の骸を除く守護者全員がアジトに集まった。
「…10代目とその守護者の顔や素性などの個人情報はトップシークレットですからね。その辺りは本部に命じて情報操作させてますし、その怪盗がマフィアとは無関係の一般人ならわかりはしないと思いますが…」
「普通なら俺達に行き着く事は難しいよな。誰かが情報を横流ししてなければの話だけど」
綱吉の右腕の獄寺も綱吉同様、キッドがボンゴレリングを盗み出す事など不可能と考えていた。
だが、綱吉の左腕を務める山本は内通者がいる可能性を捨てていないようだ。
「内通者か…。可能性はゼロじゃないかもね」
綱吉はため息をつきながら、たくさんの新聞をテーブル上に並べた。
「こうやってキッドの記事が載った新聞を見てみると…。イングラム公国やサブリナ公国など外国の宝石も狙っているけど、それはいずれも宝石が来日した時だ。ボンゴレリングが日本にあると知った上で俺達を油断させる為に予告状を本部に送った可能性も充分考えられるよね」
「ボンゴレ内か同盟ファミリーかは知りませんが…。10代目!!内通者なんて見つけ次第、俺が果たしてやりますよ」
「ぜ…絶対いると決まったわけじゃないし…。獄寺くん、そんなに気合い入れなくて大丈夫だからね」
意気込みすぎて鼻息も荒い獄寺を綱吉は苦笑いをしながら宥めた。
「先輩もクロームもランボも気をつけてくれよな。キッドは変装と声真似の名人らしいし、入れ替わったりされないように予告の日まではアジトに寝泊まりした方がいいかもな」
「ここの出入り口は声紋・指紋認証システムが使われているのだったな。なるほど。変装して声を真似ても指紋を真似るのは極限に難しい。それが本人かキッドかの確認になるわけか」
「そーいう事っスね」
「ボス、雨の人。警察には言わなくていいの?」
「警察は必要ないと思うぜ。俺達がたった1人に負けるわけないし、マフィアですなんて言えないしさ」
「何か山本、最近頼もしくなったよね」
綱吉に誉められた山本は嬉しそうにキリッとした表情を緩め、頬を掻いた。
「ツナに言われると照れんのな。まあ、いつまでも難しい話を獄寺任せにすんのも左腕として情けないし、これでも俺…かなり頑張ったんだぜ」
「テメーはしゃしゃり出なくていいんだよ!!10代目を差し置いて、何を勝手に仕切ってやがる!!」
獄寺が山本に噛みつくと、綱吉はテーブルをバンと叩いた。
「獄寺くん。別に誰が話し合いを仕切ったって俺は構わないんだ。だから、山本を責めるのはやめようか」
「す…すいません…。10代目…」
「あのさ、獄寺くん。アジトの外で本人確認をする為の手段は何がいいかな?」
すっかりしょげてしまった獄寺を見て、言い過ぎたかと綱吉はあえて獄寺にだけ尋ねた。