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□第12話
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『す、好き…なの?』


「うん。だから、早く。」


『お…おう。』



なんだか嬉しい。

…けど、なんだか騙しているようで気が引ける。


たぶんキルアが好きなのは「演奏」の力でなく、「念」の力だ。


オレの念のエネルギーは人を惹きつける、ってヒソカが会ったばっかの時言ってたような。

キルアがこんなにオレの演奏を聴きたがるのはそのせいだろうか?


…それはそうとして、ヴィキはバイオリンを構える。

軽く深呼吸をしてから、ヴィキは曲を奏でる。



「…やっぱ、お前の演奏は聴いてて落ち着く…」


『…サンキュ。』



曲を奏でながらヴィキは少し罪悪感を覚える。


まさか、自分の念がキルアの心を操っているのではないか?


最近やけに優しいキルア…。

それもこのせいなんじゃないだろうか?


たしかキルアが優しくなったのはオレが演奏を聴かせてからのはず…


…これもいずれは原作を崩すことに繋がってしまうのではないか?



「…ヴィキ。…ありがとな。」



演奏を終えると、キルアはヴィキに笑いかける。



『…あ、ううん。…こんなので楽になったらいいんだけど。』



念を使ったから絶対良くなってるはずだ。

キルアも目に光が戻ったみたいだし。



「ああ、すげー楽になった。サンキュ。

その、さ…前した約束、覚えてるか?」



キルアは急に躊躇いがちに話題を変える。



『もちろん。覚えてるよ。』


「その…その約束、もうこれでおしまいか?」


『…?…ああ、そういうこと。

ううん、キルアさえよければオレはいつでも演奏するよ。』


「…!マジで!?」


『う、うん…。』



返事をした瞬間、キルアの目の色が変わったので驚いた。


…オレの念はそこまでキルアの心を動かしていたのだろうか。


…まずいよな。

ここであんまり仲良くなったら、原作が狂いそうだ。

あの名言、「ゴンと友達になりたい」がなくなっちゃうかもしれない。


オレが友達になったらそのセリフがなくなるのは、十分ありうる。


そしたらあの「声」に何言われるかわかんないぞ…

ヤバい、あの「声」オレのこと気絶させたけど。

次はマジで殺されるかもしれない!



「…じゃあ、さ。」


『…は、はいっ!?』



ボーっとしていたので変な返事をしてしまった。

だがキルアは?マークを浮かべるだけで、話を続ける。



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