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□第20話
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『おはよ、キルア』


「はよ、ヴィキー」



部屋に入ると、すでにキルアは席についていた。

二人で使うには大きすぎるテーブルに料理が並べられている。



「それでは失礼致します」


『あ、ありがとうございます』



ひとしきり料理を並べ終えた使用人が出ていくと、ヴィキはキルアと二人っきりになる。

…毎日のことなんだけどまだ慣れない。



「じゃあいただきまーす」


『いただきますー』



いつもように朝食とは思えないほど豪華な料理に手をつける。

…うん、おいしい。



「なあ、ヴィキ」


『ん?』



スープに手をつけようとしたとき、キルアに話しかけられる。

あの夜以来これといった進展はないけど、緊張してしまう。



「お前もう男のフリする意味ないんだろ?
口調とかさ、直さないのか?」


『え、なんで?』



予想外の質問だったので少し戸惑うヴィキ。

もう一週間も経つから今さらって感じするし。



「…や、なんとなく」


『まあ、いいけど』



気まぐれなキルアのことだから、本当になんとなくなんだろう。

そう思ったヴィキはキルアに先を言うよう促す。



「一人称とかもさ、変えないのか?」


『…変えてほしいの?』


「うん」



キルア即答。

そっか、やっぱりキルアとしては女の子っぽい彼女の方がいいんだろう。


すぐに話の趣旨を読んだヴィキ。

そういえば一人称も前から変えようと思ってたし、いい機会なのかな。



『うん、いいよ』


「…あ、そここだわんないんだ」



あっさり承諾したことに驚くキルア。



『うん、だってオレだってキルアが喜んでくれる方がいいもん』


「そ…そっか」



あれ、照れたか。

少し頬を染めて目を反らすキルアはなんとも言えず可愛い。


最近すぐ照れるキルアのせいでこっちもちょっと恥ずかしい。

…という話はおいといて。



『じゃあ今日から…私、でいこうかな』


「ああ、なんかそっちのがいいよ」


『そ…そうかな。じゃあ私、頑張る!』



自分に違和感。

なんだか急に恥ずかしくなってきた。



「うん、やっぱそれがいい。似合ってる」


『あ…ありがとう』



嬉しそうに、にこっと笑うキルア。

その笑顔が見れるなら、私はどんなことでもできそうだとおもった。


…でもやっぱり違和感。

慣れるまで大変だ。



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