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□第13話
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…そんな…。

ここまでみんなに支えられながら頑張ってきたのに…!



「戦い方も単純明快。

武器OK反則なしで相手にまいったと言わせれば勝ち!」



この辺のルールも変わってない。


…オレは、戦いもせずにまいったと言わなければいけないのか。


こんなのって…ないよ…!



「相手を死にいたらしめてしまった者は即失格!

その時点でそのブロックの残りの者は合格じゃ。」



…オレが落ちるには、まいったというか人を殺すしか方法はない。


人を殺すのは原作を壊すことに繋がるし、まずその行為自体駄目だ。



「試合はAブロックBブロック交互に行う。

それでは第一試合ハンゾー対ゴン!」


「…行ってくるね。」


『…頑張って。』



名前を呼ばれたゴンが、審判の前に立ち、ハンゾーと向かい合う。


…大丈夫、原作通りだ。


今気付いたが、原作の筋の部分の対戦の組み合わせは変わっていないが他は結構変わっていた。


…オレが戦うのはたぶん、ゴンに負けたハンゾーと、ポックルだ。

二人に「まいった」って言えばいいんだ。

そうすれば、原作は狂わない。


でも…。

そんなオレを見たみんなはなんて言うんだろう?


想像するだけで怖くなった。

…でも今からこれが現実になるんだ…。


目の前でゴンがハンゾーの拷問を受けている。

だが、それが頭に入らないほどヴィキは緊迫状態にあった。


…怖い。みんな、オレをどんな目で見るんだろう。

戦わずに「まいった」なんて言うやつ、誰も相手にしてくれない。


…ゴンの腕が折れる音がする。

だがそんな音も耳を通り抜けていく。


結局、自業自得なのだろうか。

オレがみんなと仲良くなんかするから…こんなことになってしまったのだろうか。


いっそ、何も考えなければ楽になれるだろうか。

ここに来たこと自体、なかったことにしたい。


…もう、いいや。

ただ、「まいった」って言うだけじゃないか。

「まいった」って二回言って、ここを去るだけだ。


誰かが怒ってオレを殴るかもしれない。


でも、いい。

むしろ、この世界から消し去って欲しい。

みんなの幻滅した目なんて見たくない。


…気づけばゴンとハンゾーの戦いは終わり、次はBブロックの戦い。

ヴィキは光の灯らぬ目で、戦いを見つめていた。


考えることを拒絶していた。

ただ、座って目の前の状況を受け入れるだけ。

それが一番、楽だったから。



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