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□第15話
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『嘘っぽい話だから、信じられないかもしれない。

…でも、今から話すことは全部本当だから…』



ヴィキは使用人からもらったジュースをぐびっと飲む。


…なんかオレ、人と話すときジュース飲みすぎてない?



「…うん。できるだけ、信じられるようにするよ。」



二人は広い部屋の椅子に向かい合って座って話す。


…少し緊迫した空気が流れる。



『じゃあまず…。オレさ、ここの世界じゃない…他の世界から来たんだ』


「…え?」



案の定、キルアは信じられない、といったように目を見開いた。


…だが反論はせず、黙って話の続きを待つ。



『オレは元の世界でここの世界を見てて…。

この世界が、大好きだった。』


「…うん。」



キルアはおかしな顔一つせずに真剣な表情で話を聞いてくれる。

そんな少しの優しさがすごく嬉しかった。



『ある日、ある人に言われたんだ。

「あっちの世界に行ってみないか」って。』



…ホントはちょっと違うけど…まあこんなもんだろ。

…ここからちょっと捏造入ります…。



『オレはもちろん「行きたい」って言った。

…でも、その人はオレに条件を付けたんだ。』


「…どんな?」


『…男装して、本当の自分を隠す事。

そして…この世界の未来を壊さない事。』


「この世界の、未来…?」



言い方がちょっと違うが、まあ嘘ではない。


キルアはきょとんとした顔でこちらを見つめていた。



『…だけど、本当の自分を隠すことなんて無理だった。

…あっさりみんなオレが女だって見破ったんだよね。』


「…やっぱ、男装っていうのは趣味じゃなかったんだ。」


『…当たり前だろ…。

本音を言うとずっとこのままもう男装なんてしたくないかな…』


「…でもそれってことは、お前は一個条件を破ったことになるだろ?」


『…ああ。そのせいで一回気絶させられた。』


「…! あの時の…!」



…そう、第四次試験の終わりにオッサンに襲われて気絶したんだよ。

…あれは「声」の目論見だった…。



『…やっぱ、信じらんないよな?』


「…ちょっと信じられないこともあるけど…信じるよ。」


『…ありがと。…でもなんでそんなにあっさり信じれる?』


「ん…なんとなく。お前、なんだか人と違った雰囲気持ってるんだよなー。

なんか、人を引き寄せるっていうか?

だから、他の世界の人間…って言われるとなんか納得できる。」



それって、念…!?

まさか、キルアもう念できてたのっ?



「…なんか自分でもわかんないや。オーラ…とはまたなんか違うし。

でも、お前といるとなんか落ち着く。」



ああ…。そっか。

たぶんキルア、知らないうちに念を感じ取ってたんだ。


…それにしてもすごいね、念を知らないのにそこまで感じ取れるなんて。



『続き、いい?』


「ああ、お願い。お前のここに来る前のこと…聞きたい。」



了解、というようにヴィキは微笑み、ジュースを一口飲んだ。



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