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□第16話
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午後2時前。


2冊ほどバイオリン曲集というものを買ってヴィキは待ち合わせの広場へ向かう。



『キルア、いないな…』



キルアの姿を探すが、それらしき影は見つからない。

…ベンチの前で少しだけ待っていると、知らないお兄さんに話しかけられる。



「ねえ、君一人?ちょっと俺と遊ばない?」


『…はい?』



…ナンパ?


…まさかこのオレを…?



「君、綺麗な着物着てるよねー。少し見せてよ。」


『…ちょっ、やめてください…っ!』



本当にナンパだ…っ!


ヴィキは男に無理矢理引っ張られ人通りの少ない場所に連れてこられる。


…たいして力は強くなく簡単に突き飛ばせそうだ。

が、こんなところで騒ぎを起こして目立ったらゾルディック家の方々に迷惑だろう。


…少し怖いがヴィキは黙って抵抗しなかった。


…大丈夫。

何かされそうになったら逃げればいいんだ。




ーキルアsideー

…午後2時頃。


キルアは時間ぴったりか少し早いくらいに待ち合わせ場所についた。

そう待たないうちにヴィキの姿を見つけ、キルアは走っていこうとした。


…が。

急にイルミ――兄に似た殺気を感じ、立ち止まる。


―兄貴…?


…まさか、な。まだ兄貴は試験から帰ってきていないはず…


警戒しながらも、キルアはヴィキの事が心配で彼女の姿を探す。

ヴィキは…いた、が…。



『ちょっ、やめてください…っ!』



ヴィキは知らない男に無理矢理どこか連れてかれていた。



「っ!!」



…助けなきゃ…

そう思ったが、足が動かなかった。


…さっきの兄と似た殺気は、その男が放っていたからだ。


…ヴィキを、助けなきゃ。

なんとか足を動かして、キルアはヴィキの連れ去られた細い道に入る。


…幸いと言っていいのか、そこは人通りが全くなかった。


…正直、すごく怖い。足が震えてる。

…なのに、ヴィキはオレよりヤツの近くにいるのに全く動じていない。


まさか、あの殺気に気付いていないはずはない。

あの親父でさえ認めたヴィキなんだから。



「綺麗な着物だねー。ちょっと触らせてくれない?」


『…こっ…この変態!』



男は気持ち悪い笑みを浮かべヴィキに触れようとした。



「っ!!…ヴィキに触るな…ッ!」



無意識のままオレはついそう叫んでしまった。



『…キルア!』


「…なんだお前?」



…殺気がこちらに向けられる。


…怖い。できることなら逃げてしまいたい。

足が、すくむ。


ヴィキはオレが恐れているその殺気をものともせず平然と立っていた。



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