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□第19話
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――コン、コン


深夜のゾルディック家にノック音が響く。



『キルア…夜遅くにごめん、ヴィキだよ…』



そう小さな声でドアの前で話し掛けた。


…やっぱりもうキルア、起きてないよね…

返事がないのでヴィキは諦めて帰ろうとした。


…すると、ガチャッとドアが開き、キルアが驚いた顔でこちらを見た。



「こんな時間にどした…?」


『…ごめん』



何も考えずにここまで来たけど…


なんでオレはここまで来たんだろう。

しばらく俯いていると、キルアは何も聞かずに笑ってくれた。



「…まあ、理由なんていいから入れよ」


『うん、ありがとう…』



ヴィキはキルアに続いて部屋に入った。

二人で横に並んで長いソファに座る。


…沈黙。


オレ、馬鹿だ…。

こんな夜に起こしてまでこんなことして…



『ごめん、キルア…起こしちゃったよな…』



謝ることしかできない。


オレはただ声が聞きたいってだけでここに来てしまったんだから。


ほんと…馬鹿。



「うん、起こされた。…でも変な夢見たから…来てくれて嬉しいよ」


『…え?』



変な夢を見たからって起こされたら誰だって気分が悪いだろう。


ヴィキが疑問に感じていると。



「さっきすっげぇリアルで嫌な夢見てたんだ。

元の世界のお前が死ぬ夢…」


『…元の世界?』



どういう意味だろう。


…まさか、“天の声”が何かしたのだろうか。



「…なんかな、よくわかんないけど…あれが元の世界なんだなって思ったんだ」


『…夢の中のオレはどうだった?』



…きっと、キルアは本当に元の世界のオレを見たんだ。

向こうのオレの、最期の瞬間を…



「…完全に息を引き取る前から…目は生きてなかった。」


『そう…』



それ以上は訊かなかった。


…訊けなかった。


あまりにもキルアが辛そうな顔をしてたから…


なんだかなにかが混ざり合ったような、悲しい気分だった。



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