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□第19話
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『…ねえキルア。オレも…夢を見たんだ』



話を始めようとすると、キルアはこちらを真剣な眼差しで見つめた。



『この世界にオレを連れて来た人が…言った。

元の世界のオレは死んだって』


「…!じゃあ、あの夢は…」


『…多分、本当にあった話…かな?』



なんとも言えない悲しい気持ちが込み上げてくる。


そんな気持ちを見透かされないようにヴィキは明るく言った。



「……。」



キルアはなんと言えばいいかわからない様子だった。


…まあ、普通はそうだろう。

オレだって、こんな状況の人にかける言葉なんて知らない。

そもそもこんな状況の人なんて極めて稀だと思うが。



『ごめん、こんなことで来ちゃって…』


「…気にすんな」



キルアは気遣ってくれてるのかそれ以上の事は言わず、ただ頭を撫でてくれていた。


…ありがとう。


声に出すと泣きそうだったから、ヴィキは心の中で呟く。


…言葉はいらない。

今は、貴方の温もりが欲しい…



『キルア…』



ヴィキは名前を呼んだ。


なに、と笑って返すキルア。


でも今すぐ抱きしめて…なんて、言えるわけない。



『ごめん…こんなことの為だけに来ちゃって…』



そこまで言って、はっと気が付く。

…考えてみたらオレは何をしているんだ。


深夜に男の部屋に入ったんだ…

想いの通じている男の部屋に。


もちろんキルアのことを信じているけども。


変に意識してしまう。



「…いいよ、気にすんなって。

お前が迷ったとき…ここに来てくれたっていうことは嬉しいから」



だから謝んなよ?と笑ったキルア。

…意識しちゃう。



「…どうした?」



頬を染めて目を逸らすヴィキを見てキルアは訊く。


優しい笑顔が、ヴィキのドキドキを大きくさせる。



「…そんな簡単な立ち直れるワケないよな…

…いいぜ、もっとこっちきても」


『へっ!?』



おいで、というようにキルアは悪戯な笑みで手招きする。


…からかっているんだろうか。


ヴィキは手招きするキルアを無視し、恥ずかしさで顔を背ける。



でも、そうやって元気付けようとしてくれてるのかも。

そう思ってキルアの方を向き直そうとした…ら。



背中に感じる温もり。


後ろから首に腕をまわされた。



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