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□第22話
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「お待ちしておりましたキルア様、ヴィキ様」



目的地に着くと、使用人達が揃って恭しく一礼する。


夜の月明かりから一変して目に入ってくるシャンデリアの光は、いつもより光って見えて少しまぶしい。



『あ、ありがとう』


「ゴン、いる?」



あんな出迎え方をされると普通の人は戸惑うのだが、キルアは慣れているのだろう。

そんなのは気にもせずゴンがいるか確認する。



「はい、あちらでゴトーが相手をしております」


「わかった、早く連れていって」


「かしこまりました」



こちらです、と使用人はついてくるよう促す。



これから、ゴンに会うんだ…


ヴィキは小さく深呼吸をする。

あんな別れ方をした後なので、やはり緊張する。


あの時…原作を壊さないように、その想いで頭がいっぱいで。

一緒に合格するために頑張ってきたゴン達の気持ち、全然考えてなかった。


ゴン達は突然試験を放棄していなくなった私のこと、どう思ってるんだろう…



「…ヴィキ。大丈夫だから。」



ヴィキの不安を感じとったのか、キルアは小さくそう言うとぽんと小さくヴィキの頭を叩いた。



『…うん』



気にしてくれたのが嬉しくて、不安なんか一瞬だけ忘れて頬が緩んだ。

するとキルアはふ、と小さく笑った。


「ん、そうやってお前は笑ってればいいんだよ」



ほら行くぞ、と使用人の後に続きながらキルアはそう言った。


背を向ける直前に少しだけ、キルアの隠しきれていない照れ笑いが見えた。



『…頑張ろう』



キルアがいてくれてよかったな。

何度そう思ったことだろう。



大丈夫。

なんとかなるよ。


気合いをいれて、ヴィキは歩きだした。



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