Story
□阿部くんのジャージ
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5月に入り、比較的過ごしやすくなって来たけど、朝はまだ冷え込む。それなのに。
「み・は・し―っ!!んでそんな格好してんだ?!腹冷えたり、肩冷えたり、風邪ひいたりしたらどうすんだっ!!?」
「ひ、ひぃっ。」
そう言って三橋は頭を抱え込んでベンチの端っこに逃げた。
(あぁ、なんでオレ、いつも怒鳴っちゃうんだ…。恐がられるって分かってンのに…。)
「…ちっ」
「っ!?ご、ごめんな、さい…。あ、あったかく、する…。」
三橋はあたふたと服を着始める。そして、チラッとこっちを向いた。
「んだよ??」
「あ、あの…。今日、これ以上、服、持ってきてない…。」
「ハァっ!!?まだ寒いんだから、もっと持ってこいって言ったじゃねぇか?!!」
頭をグーでゴリゴリすると、うひぃと泣きそうな声が聞こえてきた。
あ、わりぃ、とやめる。さすがにやり過ぎたな。あれ、結構痛いんだよなァ、でも、オレは三橋のコトを思って怒っているのであって、決して嫌いなわけ……
「っくしゅん…。」
「……。」
「…………。。。」
明らかにクシャミ。しかも、すぐ近くにいる三橋から。
「てめえーっ!!!」
「っっっ?!!!」
しかし、風邪の引きかけだったらすぐなおる。オレはエナメルからジャージを取り出し、三橋の肩にかけてあげた。
「ぇ??」
ポカンとした表情で(しかも上目遣い)聞かれて、うっと息を飲む。
「か、風邪ひかれたら困るだろっ」
つい、顔をそらして大きめの声で言ってしまった。大きい声に、三橋ビビっちゃったか??とおもい、恐る恐る見てみると、
「あ、阿部くん、の……うひっ」
ニコニコして、オレのジャージに袖を通していた。
こういうところ、にくめないし、むしろ、すきだ。
ふっと笑って、
「三橋。風邪ひいたらいつでもオレに言えよ。」
「うん!あ、ありがとうっ!」
そう言ってニッコリ笑ってくれた。そして内心、スゲェ可愛いな、とか思っていた。
ま、風邪ひいたときはその時は、オレ流で治すけどな…。(ニヤリ)