Story


□お裁縫
1ページ/4ページ



「やっべぇ。ボタンとれちゃった…。」

朝練が終わり、着替えをしていたときだった。
いつのまにか、ボタンが取れてしまっていたらしい。

「マヂじゃん。」

「安全ピン、誰か持ってねぇの??」

皆が心配して近寄ってきてくれた。
(うぅ、皆優しいなっ…)

「あ、オレ縫えるよ。」

「「え゛っ??!」」

花井が名乗りあげた。その手には既に針と糸が。

「マヂで!?ゲンミツにやってくれよ〜。」

とててて、と花井の所に走り寄る。

そのときの花井は何故か、勝ち誇ったような顔をしていた。

イスに座り、花井の顔がすぐそばまで近付いていた。

「っ。」

「??なんだよ??」

不思議そうに聞いてくる。

「なんでもないよっ、それよりも早く付けてよ!!」

「はいはい。」

呆れたようだけど口角は上がっていて、何処と無く嬉しそうだった。

ボタンを付ける為に花井の手がシャツに触れる。

花井の指は細長くて、綺麗だった。

不意に、花井の指が肌に触れた。

「「「っ??!」」」

見守っていた全員が驚いた。というか、こっちがビックリだ。

当の本人もビックリしている。

「わ、わりぃっ」

「いや、大丈夫っ」

至近距離で謝られ、息がかかる。火照った顔は、隠したいけれど、花井も花井で赤くなっていて、

(あ…。お揃いみたいだ)

そして、にかぁ、と笑った。

触れられた場所は、ほのかに熱を持っていた。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ