Story
□お裁縫
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「やっべぇ。ボタンとれちゃった…。」
朝練が終わり、着替えをしていたときだった。
いつのまにか、ボタンが取れてしまっていたらしい。
「マヂじゃん。」
「安全ピン、誰か持ってねぇの??」
皆が心配して近寄ってきてくれた。
(うぅ、皆優しいなっ…)
「あ、オレ縫えるよ。」
「「え゛っ??!」」
花井が名乗りあげた。その手には既に針と糸が。
「マヂで!?ゲンミツにやってくれよ〜。」
とててて、と花井の所に走り寄る。
そのときの花井は何故か、勝ち誇ったような顔をしていた。
イスに座り、花井の顔がすぐそばまで近付いていた。
「っ。」
「??なんだよ??」
不思議そうに聞いてくる。
「なんでもないよっ、それよりも早く付けてよ!!」
「はいはい。」
呆れたようだけど口角は上がっていて、何処と無く嬉しそうだった。
ボタンを付ける為に花井の手がシャツに触れる。
花井の指は細長くて、綺麗だった。
不意に、花井の指が肌に触れた。
「「「っ??!」」」
見守っていた全員が驚いた。というか、こっちがビックリだ。
当の本人もビックリしている。
「わ、わりぃっ」
「いや、大丈夫っ」
至近距離で謝られ、息がかかる。火照った顔は、隠したいけれど、花井も花井で赤くなっていて、
(あ…。お揃いみたいだ)
そして、にかぁ、と笑った。
触れられた場所は、ほのかに熱を持っていた。