獣の奏者エリン 小説
□全てを含めて君は
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「あれ?」
イアルが恋人としてエリンの所に来ていた、ある日の事だった。
「どうした?」
外に行って戻ってきたエリンにイアルが問いかける。
エリンの手には一枚の紙切れ、手紙が握られていた。
「あ、いえ。手紙が来てたんです。
急ぎの用事だったら困るから、ちょっと向こうで見てきますね」
「ああ」
エリンが隣の部屋へ行き、しばらく沈黙が続く。
イアルが黙って待っていると、
「ん?」
エリンが行った部屋で、椅子がちょっと大袈裟に揺れたのをイアルは聞き逃さなかった。
ちょっと位なら座ったりしただけの音だったのだろうが、僅かに聞こえる慌てた声。
それにさっきの音は普通より少し大きかった気がイアルにはした。