ととろ続編






「…はっ!」

目を覚ました綱吉は、慌てて辺りを見回した。
見慣れた風景。
紛れもなく、ここは自分の家だ。

「大丈夫?廊下で倒れてたんだよ、綱吉君」
「入江さん!」
「熱中症かな?でも顔色もいいし、大丈夫そうだね」

心配そうに顔を覗き込んでくるのは、一緒に住んでいる友人の正一だ。
倒れる前のことはよく覚えていないが、どうやらまたドジってしまったらしい。
気を失っている間に思い出したくもない悪夢を見たような気がするが、それは気のせいに違いない。
薄っすらと残る何かを無視して、綱吉はむくりと起き上がった。

「綱吉君、ちゃんと虫除け塗らなかったね?体中虫に刺されてるよ」

あはは、と笑いながら正一が綱吉の体を指差す。
見れば、確かに体中に赤い点々が残ってしまっていた。
でも不思議なことに、全く痒みはない。
何かおかしいと首を傾げる綱吉の脳裏を過ぎるもの。


『オレはディーノ。コイツらは炎真、白蘭』
『普段は、さっきの小さな体で動いてる…』
『この前たまたま綱吉クンのパンツを拾ってね、それから僕たち、すごく気に入っちゃったんだ♪』

『なぁツナ、人ってのは自分の所有物に証を残す面白い方法を持ってるらしーじゃねーか』
『うん…きすまーくって言うんだよね?』
『綱吉クンの肌は、白くて柔らくて…すごく美味しそうだね♪』


「…う、わああああっ!?」
「ど、どーしたの綱吉クン!?」

綱吉は真っ赤な顔をして、己の体を隠すように強く掻き抱いた。
夢だけど。夢じゃなかった!
よく覚えてないけれど、そうだ。
コレは確かに、あの頭のおかしい3人組に付けられたものだ。
パンツ泥棒の三人組に!

「オオオオレもう寝るね入江さん!」
「う、うん?あ、布団は敷いてあるから」
「ありがとうございますっ!」

信じられない。
まさか、体中にキスマークを残されてしまうなんて。
込み上げる寒気に全身を擦りながら勢いよく自分の部屋の襖を開けた綱吉は、また目を丸くさせられるのだった。

「おわああああーーーっ!?」

そして絶叫。
いる。
どう見ても、自分の部屋にあの毛玉達が…いる。

「おおおおお前たちこここんなとこで何して…っ!」

しかし毛玉達は全く動じない。
赤色はぽよんぽよんと綱吉の布団の上ではしゃぐように飛び跳ね、金色はちゃっかりと綱吉の枕を頭にして寝ている。
どうも、白色の姿は見当たらないようだが。
硬直したままの綱吉と目を合わせた金色が、ここに来いと言いたげにポンポンと布団を叩いた。
短くもふもふした腕を、綱吉がいつも頭を置いている場所へ必死に伸ばして。
まさか、これはもしかしなくとも。

「う、腕枕…?」

勿論そうだと言いたげに、金色がニコニコ微笑んでいる。
いや、そんな短い腕に頭が乗るわけないよね、見ればわかるだろ気付け!
と言いたい訳だが、何だかそんなこと言えない雰囲気である。
金色の自信満々のどや顔を、もうこれ以上見ていられない。
綱吉はとりあえず、はしゃぎまくっている赤色の首根っこをむにゅっと掴んで持ち上げて鎮めさせ、残りの一匹を探した。
来ていない訳がないのだ。
そしてさっきから、何だか嫌な予感がする。

「うわああああーーーーっ!」

そして予感は的中し。
見つけたのは、開けっ放しにしていた綱吉のタンスの中。
ほくほく顔で綱吉の残り少ないパンツをガサガサと漁っている白い塊。
それを慌てて掴み上げ、両手の平でむにゅうう!と思い切り縦に潰してやる。
白色は綱吉の手のひらの間でぴーぴーと泣き声を上げ、プルプルと体を震わせた。
中身があの下着泥棒の白蘭だと理解しているのに、やっぱりこの愛らしい姿は卑怯すぎる。

「…これからはっ、あんな変なことしちゃダメだぞ…?」

何だか自分が悪いことをしているようで、綱吉は少し怒っただけで白色を解放した。
可愛いものに弱い自分が憎憎しい!
白色はすぐに元気を取り戻してぴょんぴょんと喜びの舞を踊り、ぴゅーっと光の速さで綱吉の布団の中へ潜り込んで行く。
その布団では金色がまだ腕枕アピールをしているし、赤色はさっきから足にしっかりとしがみ付いて離れる素振りを全く見せず、正直邪魔で仕方ない。

「はぁ…疲れた…寝よう」

けれど、そんな毛玉達を追いやる元気ももうなく。
綱吉は諦め半分寝ることにした。
足にしがみつく赤色を抱き上げ隣に寝せ、金色をさり気無く撫でてそっと腕枕を止めさせる。
もふもふの毛並みでぎゅうぎゅうと抱き付いて来る2色に挟まれた綱吉が、そっと布団に横になろう…

「ひいいいいっ!?」

としたが、綱吉は慌てて飛び起きた。
布団を捲り上げれば、股間にぴたりと張り付いている白色。
あれから忘れていたが、布団の中でずっとこのチャンスを狙っていたようだ。

「ホントにお前はっ…うううう!?」

しかも、股間のそれを撫でるようにズボンの上でモゾモゾと動き出す始末。
綱吉は奇声を上げ、すぐさま白色を摘み上げた。
またわざとらしくぴーぴーと可愛い声を出してプルプルして瞳を潤ませるが、もう許さない。

「おやすみ!」

金色と赤色を両脇に抱いて、綱吉が再び布団に身を埋める。
その頃。
天井の電気のスイッチの長い紐にグルグル巻きにされて垂らされ、白色はぴーぴーと鳴きながら空中をブランブランしていた。






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「綱吉クンおはよー…また遅刻す…うわあああーーっ!?」

翌日、欠伸をしながら綱吉の部屋の襖を開けた正一は絶叫した。

「お早う入江さん…って、う」

入江の声に反射的に目が覚め、綱吉は起き上がろうと腹に力を込めた。
けれど全く起き上がれない。体が重い。
更に、激しく暑苦しい。

「え…おわあああああーー!?」

そして、正一に続き綱吉も絶叫した。
自分の上に乗っているのは布団ではなく、あの白蘭という男で。
しかも左右からはしっかりと、ディーノと炎真に抱きつかれ。

しかも、真っ裸の。
ついにはパンツすら穿いていない、真っ裸の男三人に群がられている。
そしてゴリゴリと音が出そうな程に押し付けられる、寝ているはずの3人の硬くて熱いもの。


「ぎいやあああああーーー!」


綱吉が再び地面を震わす程の叫び声をあげ気絶しかけたのは、言うまでもない。



おわりだよ!


 













どんな時でも白蘭様は白蘭様なんだよ!っていうこときっと言いたかったんだと思う。

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