またエヴァ映画版の話なんですけど、人類が補完される時に皆の前に綾波さんが現れるんですよ。
で、好きな人がいる人は綾波さんが最後その好きな人に変わって抱きつかれたりとかして、パシャン、て皆がオレンジ色の液体になって補完されてくんですよ。

で、その辺りを白馬炎でやりたい!と思った。

主に白ツナ。
未来編なのに普通に炎真クンが出ててディーノさんと正チャンと言葉を交わしてる謎。

エヴァのトラウマシーンを元に作った話なので若干でも死にネタくさいのがダメな方にはおすすめ出来ません。

BGM「甘き死よ、来たれ」













「やっと、この時がきた」

ついに、トゥリニセッテを手中に収めた。
ずっと望んできた、新世界を築く鍵。
白蘭は真っ白な両翼を広げ、光輝くその鍵を空へと還した

「僕の待ち望んでいたものが、やっと始まる…!」

この地球上に存在する全ての魂が、肉体という殻を失い無へ還っていく時が来た。














「…嫌だ、怖い、怖い…っ」

世界の終焉。
暗い部屋の隅で膝を抱え、炎真は一人でガタガタと震えていた。
理解出来なくて、ただ怖くて。
けれど確実に迫りくるそれに、こうしてただ怯えることしか出来ない。


『エンマ君』


静寂に包まれた部屋に響き渡った、その声。
はっと顔を上げた炎真は、紋章を描いた怯える瞳の中に確かに歓喜の色を宿した。

「ツナ…君…?」

目の前に居たのは、大好きな人。
居るはずのない綱吉が、頷きニッコリと微笑んだ。
もう会えることなんて、絶対にないと思っていたのに。
信じられない再開に、炎真の瞳から一筋の涙がこぼれた。

『行こう、エンマ君。怖くなんかないよ。ずっと、一緒にいよう』

伸ばされる指。
どうしてだろう。
あんなに怖かったのに、絶望しか感じられなかったのに。
たった一瞬で恐怖など吹き飛び、その指に、強い希望の光を感じた。

「うん…ツナ君と、ずっと、一緒にいたい…」

綱吉の温かな手の平に、己の手の平を重ねて。
二人は、もう離れることのないようにしっかりと指を絡め合った。
綱吉の笑顔につられて、炎真もようやくその口元に笑みを携える。
希望の中の、幸せ。

「あっ…」

パシャン。
そして、炎真の肉体はそのかたちを失い、綱吉と一緒に無へ還っていった。













「世界の終わり、か…」

自室のバルコニーから気味の悪い色の空を見上げながら、ディーノは呟いた。
止められなかった世界の終焉。
それが己にも近付いてきていることを、ひしひしと肌で感じる。
けれど、結局何も出来ない自分が不甲斐なくて自嘲することしか出来ない。


『ディーノさん』


終わりが、どんなものであるのかなんて想像も付かなかった。
したくもなかった。
けれどそれが、まさかこんなかたちをしているだなんて。

「ツナ…」

目の前に現れた最愛の人の姿に、ディーノはただ、驚くことしか出来なかった。
けれど、すぐにそれは笑みへと変わる。

「ハハ…お前に迎えにこられたんじゃ断れねぇ。参ったな、こりゃ…」

あんなに、悔いていたのに。
世界を救えなかったことをあんなにも。
それなのに、今目の前の満面の笑みを見ただけで、こんなにも晴れ晴れとした気持ち。
悔いなど、どこかに吹き飛んでしまった。
ディーノは白い歯を覗かせて笑い、大きく腕を広げた。

「おいで、ツナ」
『うん!一緒に還ろう、ディーノさん』
「ああ…」

自分の胸に飛び込んできた綱吉を、そのまま強く強く抱きしめる。
確かに綱吉の温もりと幸福感を胸に抱き、
パシャン、
と、ディーノの魂は綱吉と還っていった。












「♪〜♪〜〜〜♪」

魂が還っていく様を高台から見渡し、白蘭は鼻歌を歌いながら最後のマシュマロを口に含んだ。
空になった袋が、ヒラヒラと何もない世界へ舞い落ちていく。

「全ての魂は無へ還った。そう、僕を残して」

白蘭は目の前に立っている人物を見つめ、優しい笑みを浮かべた。

「やっぱり僕の前には、君が現れるんだね…綱吉クン」

それは、自分が一番求めている魂のかたちをして現れるという。
全ての終わり、そして、はじまり。
自分の予想通りの姿をして現れたそれを、白蘭が手招きする。
綱吉の姿をしたそれはゆっくりと白蘭の元へ歩み、ただ、笑んだ。

「君の前には、誰が現れたのかな?」

それを知れなかったのが、唯一の心残りかもしれない。
白蘭は綱吉の体を、ただそっと、抱きしめた。
温かくて柔らかな、まるで本物のような体。

「僕だったら…いいな」

こんな時にそんなことを望むなんて、馬鹿げているけれど。
じっと自分を見上げてくる瞳。
それを静かに落とさせ、白蘭は口付けした。
初めての口付けだった。

それは確かに、綱吉の温もりがして。
思い出す、何か。
感情。思考。そして


「…っ、」


パシャン。
白い羽根だけが、空を舞った。


世界は、新しい、無の世界へと還っていく。










 







「…ろ」
 

声が聞こえる。


「…きろ……らん…」


眩しい光を感じる。


「起きろ!白蘭!」


まだぼんやりとした視界に映ったのは、泣きながら自分を揺さぶる、愛しい人だった。


「つな、よし…クン…?」
「白蘭!」

状況は理解出来ないけれど、綱吉に苦しい位に抱き締められて、何だか幸せだと思った。
光に馴れた瞳に、青い空と見慣れた風景が映り始める。
最後の闘いに参加した敵も味方も、みんな。
何故か皆が、清々しい表情をして自分を見つめていた。

「終わったんだ白蘭…もう、戦いは終わったんだよ…」

ただ、そうなのかと理解した。
そして、自分が新世界を創ることに失敗したことも。

最後の最後。
綱吉とキスした瞬間。
まさか新世界を一番望んでいたはずの自分が。
この世界に悔いを残して、新しい世界を拒んでしまっただなんて。

白蘭の魂は、無へ還らなかった。
そして、他の全ての魂も。
この世界へ戻ってきた。

「白蘭…よかった。お前が、みんなが…助かってよかった…」

くだらなくて笑ってしまう。
何兆回も挑戦してやっと手に入れたものを、ずっと欲しかったものを。
結局、最後は自分の手で壊してしまった。
けれど、それ以上に。

「…つなよし、くんっ、」

これでよかったのだと、思える自分がいる。
この選択は正しかったのだと、ひどい安堵感に喉が詰まる。
白蘭は綱吉を抱き返して涙した。声を上げた泣いた。
一度殺したはずの綱吉を、今確かに胸に抱いて。







「いいんですかディーノさん。炎真君も」
「全然よくない…けど。今だけは、いいと思う」
「ったく、まじでしょーがねーな…アイツ、すぐにお前が連れて帰れよ?正一」
「はい。まだ大学卒業出来てませんからね、白蘭さん」

三人は、二人を眺めて穏やかに微笑んだ。
他の者達も、平和を取り戻した世界に肩の力を抜いて、それぞれに幸せを噛み締めている。

世界は、かたちを取り戻した。







「でも、トゥリニセッテは確かに僕の願いを叶えてくれたんだよ」
「え?何の話?」

きょとんとする綱吉に、白蘭は内緒だよと楽しそうに笑った。





(もう一度、君に会いたかった)


end















炎真君は怯えてそうでディーノさんは達観してそうだなぁっていう希望的観測。
三人のパシャが書けて満足しました!
本当はパシャだけで終わろうかと思ったけど無理ですこれは。

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