バッテリーの本

□やっぱりモテる男子とはこういうことだ。
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朝練終了後、本日も巧の下駄箱には女子からの贈り物が上履きを下敷きに入れられていた。


が、今回はラブレターではないものがたくさん入っていた。
いや、ラブレターと似ているし、ラブレターも一緒に入っているものもあるだろう。


どちらにしろ、巧の顔はすぐに不機嫌な色に変わった。
明らかに眉をグッと寄せ、重くて深い、長いため息を吐き出した。


それを後ろから覗いて、豪は苦笑を浮かべた。

そして今日、何の日か思い出す。


「そっか、今日はバレンタインだったな」



そう、今日は女の子にとっては恋の一大イベントと呼んでもいい日、バレンタインデーだ。










ダダダッと廊下を勢いよく走る足音。
先生の野太い「廊下を走るな」と怒鳴る声の次に、勢いよく教室のドアを開ける音が響く。

その教室にいた生徒が皆、開いたドアの方に視線を向ける。

そして、クラスの生徒の1人である巧は、ドアを開けた人物を見た瞬間ウンザリとした顔になった。


ドアを開けた人物・吉貞は荒い息を整え、巧に向かって盛大な大声で叫んだ。






「原田っ!下駄箱にチョコがこぼれそうな位入れてあって、さらにはロッカーや机の中にも入れてあって、さらにはさっき3年の女子に呼ばれて告られたって、ホンマがぁっ!?」


吉貞は生徒達の前で巧の個人情報とも言えることを、真意を確かめようと廊下にまで聞こえる大声で言った。

だが、その言葉の最後が潰れたようになったのは、巧が自身の筆箱を吉貞目掛けて投げ、それが吉貞に当たったからだ。
巧は華麗なフル投球をし、投げた筆箱は豪速球が如く見事に吉貞の額にストライクを決めた。
その時、何か固い物同士がぶつかったような鈍い音がしたのは、決して気のせいではないだろう。

吉貞は撃沈し後ろに倒れ、巧は何事もなかったように自分の席に座った。



前にもこんなことはなかっただろうか…?



教室にいる生徒、吉貞を追って来た豪と東谷と沢口はこの光景にデジャヴを感じそしてもう1つ思った。





原田巧を本気で怒らせてはいけない。



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