あきらさんから

□臨時休業〜
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臨時休業:パパとの電話は一時間近くかかった。一方的にお父さんが話しているっぽいけど。受話器を置いて振り向いた顔は嬉しそうだった。「あのさ、明後日…」最後まできかずに私は常連客の方に向いて言った。「明後日は臨時休業にするからごめんなさいね」常連客は狐につままれたような顔になった。


港:父の体調がほぼ戻った頃、生まれ故郷の日本に戻ってきた。横須賀という町に祖父の遺した喫茶店があるらしい。父はこう見えて料理は得意だ。特に入れるコーヒーはどこにいっても好評だった。どうして急に喫茶店を開く事にしたのだろう?「…ここに俺がいれば、必ず帰ってきてくれるからかな…」


困惑:身体の丈夫さが取り柄だったが、取材で訪れた地で倒れ、そのまま病院送りになってしまった。少し休めば復帰できると思っていたが、医者から告げられた病名は非常に重いもので、手術をし、少なくとも数か月は入院が必要で完治までに数年はかかるらしい。真っ先に考えたのは、パートナーの事だった


実感:葉巻の煙を深く吐き出した所で、パパは漸く満足そうな表情になった。「カズの入れたコーヒーを飲み、キャシーの作ったパイを食い、上手い葉巻を吸ったらやっと実感が沸くんだ」「何をだよ?」「あぁ、やっと家に帰ってきたんだなってな」お父さんの機嫌が急浮上したのは言うまでもない。


友達:日曜日の朝。開店準備をしていると、店の扉が開いた。可愛らしい金髪の女の子だった。「あの…すみません、キャシーいませんか?」奥のキッチンにいる娘が気付いて顔を出した。「あらパス、どうしたの?」「朝早くにごめんね、試写会の券貰ったの。今日よかったらいかない?MGSの新作なのよ」


映画:「じゃあ、行ってくるね」娘はパイの準備を終えると出かけてしまった。時刻は10時になろうとしていた。そろそろスネークも起きてくるだろう。彼の分の朝食を作っていると、予想通り店に現れた。「おはよう、よく眠れた?」「ああ、おはよう…一人か?」「キャシーなら友達と映画観に行ったよ」

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