SS2

□あなたを守りたい
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さすがにSランクの兵士たちには負けるが俺だってそこそこはやれる。
知識の幅の広さだけなら誰にも負けないし、教官として兵士たちに教える能力はスネークにだって評価をもらっている。
しかし何故か……訓練時にものすごく手加減をされている気がしてならない。
訓練時でも喧嘩時でも本気で殴ってくるのはこのMSF内ではスネークぐらいのものだ。
まさか俺がそんなに弱そうに見えるとでも言うのか。
これでは俺自身の訓練にならないとたまに実戦でスネークに着いて行ったら「お前はマザーベースにいろ」と言われた。
俺が役に立たないとでもいうのか。
ありえない。あってはならない!
そんな鬱憤が溜まってか今日の訓練はどうも八つ当たり気味だ。
相手をする兵士が本気をだしてこないから余計に腹が立ちイライラと声を荒げる。
「貴様ぁ!そんな攻撃で敵を倒せるか!本気できやがれ!」
「は、はいぃ!」
「目をつぶってどうする!ちゃんと相手を確認しろ!威圧しろ!」
「はいっ!」
やっと相手を務める兵士が防御ばかりから攻撃に転じてきたのでわざと受ける位置に回る。
CQCで投げられるが、受身をとってすぐに起き上が……ろうとして「あぁ!」という声に驚いてそのまま相手を見上げる。
「なんだ?どうした?」
初めて俺を投げられた喜びで思わず声でも上げたのかと思ったが何故かその顔は青ざめている。
なんで攻撃したほうがダメージを受けてるんだ。
「ミ、ミ……ミラー副司令のお顔に……」
「ん?俺の顔がどうかしたか?」
「傷が!!」
「傷?」
はて?と自分の顔をペタリと触る。
確かに右目の下あたりにかすり傷が出来ているようだ。
完全に受身を取ったつもりだったが地面にでも擦ってしまったか。
「なんだと!?」
「副司令が怪我を?」
何故か周りで訓練していた兵士たちも手をとめコチラを見てざわざわと騒ぎ始める。
「おいおい、かすり傷だって。怪我したわけじゃない」
「申し訳ありません!俺のせいで!」
「へ?」
何故か謝る俺を投げた兵士。
「おいおい、皆して俺をからかっているのか?こんなの舐めときゃ治る」
「舐めっ……!」
「ダメです!ちゃんと消毒しないと!!もし傷が残ったら……」
「ちょ、お前らいい加減にしろよ」
今日はエイプリルフールだったか?違うよな?
「あぁ!見ろ!副司令の手の甲にも傷が!」
「あぁっ、本当だ。なんてことだ。あんなに血が滲んで……」
「医療班!医療班!」
何故かすぐ側にいたらしい医療班の一人が素早く消毒し薬を塗っていった。
俺はすっかりやる気を無くし、その場にうずくまった。
「副司令、お疲れなのでは?」
「訓練は俺たちだけでも進めておきますからどうぞお休みになってください」
何この過保護。
過保護も度が過ぎると虐待じゃない?
もしかしてハブ?俺ハブられてる?ねぇ?
「わかった。後は頼む」
「誰か、副司令を部屋までお送りしろ!」
じゃあ俺が、いや俺がとついてこようとする兵士たちを片手で制し俺は一人司令塔へとずるずる戻った。



どうしようかなぁ。
処理しなきゃいけない案件はいくつかあるけど夕飯まではみっちり訓練する予定だったから資料もまだ揃ってない。
俺そんなにダメ?役に立たない?
「どうした?何しょぼくれてる」
俯いて歩いていたら突然声をかけられた。
「ボスゥ〜〜〜」
キルハウスから戻ってきたらしいスネークは武器をあれこれ抱えている。
新しく開発された武器を試していたのかもしれない。
「……ボスだけだな。俺のこと本気で殴ってくれるの」
「……殴って欲しいのか?」
「違うよ!俺だって……俺だってスネークみたいに皆から慕われるようなサブリーダーになりたいって……思ってるんだけどな」
「……十分慕われてるじゃないか」
「……え?だって俺今だって……」
「このあいだ珍しくお前を実戦に連れていっただろう?」
「ん?うん」
「その後な。幾人かの奴らにリーダーとサブリーダーが二人で実戦に出られてはマザーベースに何かあったとき困る、と言われてな」
「まぁそれは……でも優秀なのをサポートに配置しておいたし」
「でも本当はな……」
「うん?」
「お前に怪我をさせるなと怒られた」
「は?」
「俺のほうがむしろお前に何度も蹴られたんだがな。あの時敵に見つかったろ。そのときお前少し撃たれたじゃないか」
「あぁ、あれ」
「俺が多少の傷作ってもいつものことだからいいんだと。でもお前に傷が残るのは嫌なんだとよ」
「残るも何も…いまさらじゃないか。もうあちこち傷跡残って…」
「それでも。心配なんだとさ」
「……俺は子供かよ」
「まぁ人それぞれに対する慕い方ってのは違うだろ」
「俺はあんまり嬉しくない」
皆が心配してくれるのは嬉しいし、ありがたい。
でも俺はスネークのように信頼されたい。頼られたい。
こんな男になりたい。
まるっきり、彼のようになれるとはさすがに俺も思ってない。
それでも少しでも近付きたい。
「お前が何を理想としているのかは分からんが……」
あんただよ。
「お前なら十分なれるさ。俺だって若い頃はもっと酷かったさ」
あんたはその頃からもう英雄だったじゃないか。
「お前はまだ若いし努力家だ。なれるよ」
そんなの口先だけじゃないか。誰だって言える。
でも理想とするスネークだから。
スネーク本人だから、少し信じてみたい。
「……でもやっぱりあの過保護はいただけない」
「わかったわかった。俺のほうからもいっとくさ。いい加減にしろってな」




それから数日後の訓練。
「副司令は指導してくださるだけでいいです」
「そうです!俺たちはやれます!」
ぜっんぜん変わってないじゃないか!
スネーク本当に話してくれたのか。
「あ〜……ミラーさん?」
「なんだ、マングース」
あからさまに不機嫌な声で返事をする。
「あいつらも悪気ないんですよ。ただせっかく綺麗な肌や髪が痛むのは皆が嫌なだけなんです」
「俺は女じゃないぞ」
「それでも皆の自慢のかっこいい副司令ですから」
「……かっこいい?」
「えぇ」
「自慢?」
「えぇ、ボスもミラーさんもかっこよくて俺たちの目標です」
「……そうなの?」
「そうですよ」
これしきで機嫌なおすのもどうかと思うが、まぁそういわれて嫌な気はしない。
「ふ〜ん」
「あいつらの望むようにしてやったほうが士気もあがりますよ。だから常にかっこいい副司令でいてください」
「ま、お前らがそう言うんならそうしてやるよ」
相変わらずの過保護はじれったいこともあるけれど。
慕われてはいるようなので自分の今後の成長を期待しつつ、指導に専念することにした。
ホっとしたようなマングースのため息もスルーして。







カズラジで「本気で殴ってくれるの〜」云々いってたから。
あと人様にばっかりカズアイドルお願いしておいて自分書いてなかったからね〜。

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