SS2

□パズルのピース
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朝食後、カズの部屋へ向かった。今日はオフだったはずだ。
ノックをすると間延びした返事が聞こえた。
部屋へ入ると床に座り込み真剣な顔でウンウン唸っているカズヒラがいた。
「ジグソーパズルか?」
「そう〜…」
いくつかのピースをはめては戻し、「違うな〜…」と呟いている。
スネークのほうにはちらとも視線を寄越さない。
よほど熱中しているようだ。
どれどれと覗き込むとかなりの大きさだ。
あまり自らこのてのものを遊んだことが無いから何ピースあるのかはわからないが7000ピース以上はあるのではないだろうか。
なんとなくこれが同じ形っぽいなと一つを手にとりカズが悩んでいた場所にぽいっとはめこむとぴたりとはまった。
「あ……」
「お……」
「ボスぅ、よくわかったな」
「いや、まぁ……なんとなくだ」
「俺、すんごい探したんだけどな〜…どこにあった?」
「この辺からとったぞ」
「そこ?さっき見たけどな〜」
「集中しすぎているとかえって分からないときもあるさ。それに俺のはビギナーズラックってやつじゃないか?」
「そうかもな」
「部屋に戻ってからやってたのか?」
「いや……実は夕べから……」
「まさか寝ないで?」
「いや、寝たよ。ちゃんと寝た。でもさすがに疲れたかな」
コーヒーでも入れるか、とカズは伸びをしながら立ち上がった。
「俺もやってみていいか?」
「どうぞ〜。あ、ボスもコーヒー飲む?」
「あぁ、もらおう」
絵柄はどうやらマザーベースを上空から撮ったものらしい。
まわりの海よりも分かりやすい建築物からはめていっているようで、半分くらいの部分は組みあがっている。
改めてこうしてみるとマザーベースも随分と大きくなったものだ。
コポコポとコーヒーメーカーの音が聞こえる。
カズはそれを側のソファに座って目を休めながら待っている。
スネークはいくつかのピースを嵌め込んでみたがやはりさっきのはまぐれだったようでなかなかはまらない。
色と形から予想はしているのだが、微妙に合わなかったりする。
でもたまにこれも違ったか…とためしに角度も変えてみるとすぽんとおさまったりして、その瞬間が妙に気持ちよかった。
なるほど。
たまにはこういったものも楽しいかもしれない。
「ボス、おまたせ」
「あぁ、ありがとう」
「どう?はまった?」
「二つくらいな」
「意外と難しいだろ?」
「あぁ、まったくだ」
カズは立ったままコーヒーをすすり、上からパズルを眺めている。
「あ、ボス。そこ」
「どれだ?」
「その右の…そうそのピース。そっちのハッチの部分じゃないか?」
「ん?……おぉ、はまった」
「はは、ボスの言ったとおりだな。集中しすぎてると視野が狭くなって分かるものも分からない。でもこうして視点変えると簡単に分かる場合もある」
見上げるとカズはいつになく穏やかにマザーベースを見つめている。
「こうしてみるとさ」
「うん?」
「でかくなったよな」
「……あぁ、そうだな。俺もそう思った。なぁカズ?」
「ん〜?」
「これ、皆でやらないか?あ、お前が楽しみにやっているなら無理にとは言わないが」
「いや、そうだな。皆でワイワイ考えながらやるのも楽しそうだ。なら食堂にでも持っていくか?」
「あぁ、それはいい。さっそく持っていこう」
「せっかくそこまで組み上げたんだから崩すなよ」
「わかってる」
そっとパズルを組んでいた額ごと持ち上げる。
「あ、待って。今ドア開ける……ん?そういえばボス。何の用だったんだ?」
「いや、特に用はなかった。お前の顔が見たかっただけだ」
「え、そ、そう?なの?」
特に口説こうとか思ったわけではなく本当にそう思って言ったことだが、その言葉にほんのり頬を染めてはにかむ姿につい見とれた。
そのため思い切りドアに引っかかった。
「あっ、しまっ……」
しまったと思ったときはすでに遅くバラバラとピースが落ちてしまった。
「あ〜!」
「す、すまん」
「もう〜、せっかくここまではめたのに〜」
全部バラバラになってしまったわけではないが、半分くらい落としてしまった。
「ほんとすまん」
「……まぁいいか。どうせ皆でやるつもりなんだし。ボスが壊したから手伝ってくれって言えば皆喜んで参加してくれるだろうし?」
「グッ……」



食堂にはくつろいでいる兵士たちがまだかなりいた。
パズルを持っていくとなんだなんだと寄ってきた。
事情を説明すると笑いながら「ぜひやらせてくれ」と続々と参加してきた。
「ここは俺の仕事場」と言って格納庫のピースをはめるもの。
「こないだここでサッカーしたな」などといってデッキのピースをはめるもの。
100人近くが入れ替わり立ち替わりピースをはめていき、あっという間にマザーベースが出来上がった。
カズはそれを一緒にはめたりしながら嬉しそうに笑ってみていた。
スネークも多少は携わったが、ほとんどミッションに出ることが多く。
このマザーベースはほぼカズが中心になって大きくしたといって過言ではないだろう。
「よし、最後の一枚はボスがはめてくれるか?」
「え?俺か?……いいのか?」
「もちろん。あんたはここのボスなんだから」
何故か他の兵士達にも見守られ妙に気恥ずかしさを覚えながら最後の一枚をはめた。
「おぉ!俺達のマザーベースの完成だ!」
「かっこいいな!」
「でかい!」
それぞれが喜んでいる。
「これどうする?司令室にでも飾る?」
「いや……ここでいいんじゃないか?みんなが見れるところが」
「そうか。そうだな。じゃああとでマングースにでも壁に掛けられるようにしてもらおう」
あ〜疲れた!と伸びをするカズはしかしいい顔をしている。
実は最近疲れきった顔をしていることが多かったから密かに心配していたのだが……杞憂だったようだ。
有意義な休日が過ごせたようでよかったと思う。
また明日からはお互いオーバーワークな日々が続くが、きっとあのパズルを見れば元気が出る。
そんな気がした。









オチが見つからない…;

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