SS2

□ビッグボーナス!
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会議室に各部署の幹部が集められていた。
中央に司令官であるスネーク。その横に副司令のミラーが座り、主に会議の進行はミラーが行っていた。
「さて、定例会議の内容は以上だ。今回はさらに嬉しい報告があるぞ?」
もったいぶった言い回しでチラとミラーがそれぞれの幹部たちをサングラス越しに見渡す。
幹部たちもなんだろうとそれぞれ顔を見回したりなどしている。
「いくつかの大口を無事終わらせ今MSFは非常に潤っている。
…そこで今後の諸君らの活躍を期待し、これまでの労いに臨時ボーナスが出ることになった」
おぉ〜!
全員がどよめく。
各部隊ごとに賞与がつくことは稀にあったが全部隊に出ることは初めてだったからだ。
もちろんそれを喜ばないものはいない。
皆それぞれにこにこと「やったな!」などと肩を叩き合う。
「だがしかぁし!」
和やかな雰囲気を壊すミラーの一言。
「幹部の君たちにいたってはちょっとしたテストを受けてもらう」
「て、テスト?」
一同どよめく。
「一般兵士たちと同等の賞与は確約されている。しかし幹部として
賞与に関してはこのテストによって決めさせてもらう」
「つまり、テストで値しないとされれば……」
「一切プラスはない。そればかりか幹部として相応しくないとみなされれば、降格もありえる」
「なんと!」
これはボーナスの査定を兼ねた幹部査定と言えなくもない。
つまり、あまりに悪い印象を与え、幹部として不適切と判を押されれば。
賞与どころか降格され給料も減給だ。
「なお、テストはまず俺との二者面談の後、ボスと二者面談してもらう。一人それぞれ三十分ずつ、系一時間程度だ。
各自そのさいに呼び出すのでそれまでは通常業務に戻ってくれ」
それぞれの幹部たちは複雑な表情で戻っていった。


カズと面談。〜合格編
「よし、入れ」
「失礼します」
幹部の一人が部屋へ入る。
そう広くない部屋に会議机と椅子が二脚。
奥の椅子には机の上で軽く手を組んだ副司令、ミラーが座っている。
普段の鬼教官さながらの雰囲気に緊張していると、唐突にミラーは笑顔を見せた。
「……そう固くなるな。あくまで形式的なものだよ。ただたまぁにこうして幹部たちにも緊張感を持たせないとな」
「は、はぁ」
「ボスは分からないけど俺は大体皆の働きは把握してるしさ。まあ20分ほど雑談でもしないか?より親睦を深めるために」
「そういうわけには!あ、いえ副司令と話したくないというわけではなくどうぞキチンと査定してください。そうでないと賞与は頂けません」
「まじめに?」
「もちろんです」
「俺がいいって言っても?」
「副司令もまじめに査定してください。逆に俺が査定しますよ?」
「……ふふ。そりゃあ困る。じゃあまじめに査定しようか。まずこれまでの君の任務実績だが……」
それから十分ほど査定を行った。
「さて君への俺の評価だが……」
「はい」
「S認定。ボスとの面談にもよるが幹部賞与に加え特別賞与もありだ」
「ほ、本当ですか?」
「あぁ、俺のサボリの誘惑にも屈しなかったしな」
「え、あれもテストだったんですか?」
「もちろん。このあとのボスとの面談もヘマするなよ?」
「は、ハイ!ありがとうございます!」
こうしてこの幹部との査定は30分もかからずに終了した。


カズと面談。〜減給編
 その後幾人か面談したが何人かがサボリの誘惑に勝てず談笑してしまい。
Bランクをつけられた。
しかしさすがに幹部連。l
幹部に値しないような振る舞いをするものはいなかった。
さてもう一名の幹部がやってきた。
「よし、入れ」
「し、失礼します」
緊張しているのか声がどもっている。
ミラーは思わず苦笑いした。
「そこまで固くなるな。形式的な実績確認をする程度だよ。
ミラーが安心させるようにニコリと笑うとその幹部は顔を赤らめて恥ずかしそうに椅子に座った。
「コーヒーでも飲むか?どうせ大した話は特にないんだ。君の実績は十分賞与に値するしね」
「は、ありがとうございます。いただきます!」
「それにボスに三十分面談しろとか言われたけどそんなに話すこと無いよなぁ。確認だけだったら十分で終わるぜ?
どうせだからさ、俺と雑談でもしない?俺も飽きちゃった」
「え、ミ、ミラーさんとふ、二人で……ですか?」
「そりゃあそうだろ。さっさと終わらせると俺もさぼったのボスにバレちゃうしさぁ。適当に三十分話していようよ」
「ふ、副司令と二人でお話できるなんて光栄です!」
「そお?あ、はいコーヒー」
もうこの時点で彼の査定はBランク決定だ。
しかしあまりの慕いぶりにちょっとかわいそうかなぁ、と真正面の椅子を横に持ってきてそこへ座った。
「このほうが話しやすいだろ?」
真正面のままだと堅苦しい気がして移動したのだがこれが彼に意外な効果を発揮してしまった。
うっとりとミラーを見つめ話どころではなくなってしまった。
そこでつい悪戯心がわいたミラーはさらに近寄ってみた。
おもしろいようにその隊員の顔が真っ赤になる。
「もしかして俺のこと、好きなの?」
ミラーがちょっと挑発するように首をかしげ相手を見やると赤かった顔はさらに赤くなった。
「す、好き……です」
「ふぅん?俺性癖はいたってノーマルだからそのへんよくわからないんだよねぇ。俺の何がいいの?」
「そ、その綺麗な髪も…肌も…スタイルも…」
「外見が好みなの?」
「が、外見も……非常に好きなのですが……厳しい訓練での凛々しい姿も……隊員たちを労うお優しいところも……」
「ふぅん、それから?」
ミラーがわざと相手の二の腕をさするとブルリと震えたのが分かった。
「ぜ、全部!全部好きだ!ミラーさん!」
さすがに煽り過ぎたのか興奮した幹部が抱きついてきた。
「うわっ、ちょっ、まずいって……」
「ミラーさんがノーマルでも構わない!俺はもうアンタしか!」
「わかった、落ち着け!でないとお前の首が……」
「俺が!俺が気持ち悪いですか?でも!」
「その前にまず今の状況思い出せ!変なところ触るな!」
「今?今は……」
そう今は賞与の査定中。
ドドドっと勢いよく走る足音が聞こえたと思ったらドアが壊れる勢いでバァン!と開いた。
「お前!カズから離れろぉ!」
「はっ!ボ、ボス!!」
「……だから言ったのに」
実はカズの面談の風景はモニターされその内容でスネークも査定を行っていたのだ。
すでに面談を終わらせたものたちはボスとの面談に望み緊張しながら次の部屋へ入った途端「S!」「Aランク」「……Bランクだな」と一言で終わってしまい皆が唖然としたというわけだ。
「お前は失格!幹部から降格だ!さらに今後カズの半径10M以内に近付くな!」
「そ、……そんなぁ」
「カズ、お前もお前だ。さぼるように誘惑しろとは言ったが本気で誘惑しろとは言っていないぞ」
「だっておもしろかったんだもん」
「何かあったらどうする」
「……ボスが見てたじゃない」
「ミラーさん……」
がっくりと膝を突いた元幹部が情けない声でミラーを見上げた。
「ごめんなぁ。そんなわけだからがんばってイチからやりなおせ」
「うぅ……でもそんな酷い副司令も魅力的です……」
「ファイヤーされたいか!」
「ひぃ……」
「ボスぅ。コイツ実績だけならSランクなんだからもったいない」
その言葉に納得しつつもやり切れずスネークはもう一度ぎっとその隊員を睨むと彼はますます縮こまった。
しばらくはミラーにまず近寄らないことだろう。



こうして、なんとか査定は終わった。
一般兵たちは思わぬ賞与に喜びオフのものは早速街へと繰り出していった。
幹部たちも査定が無事終わったことに安堵しそれぞれの賞与を固く愛しそうに抱きしめた。
約一名を除いて。





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