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□巣作りドラゴン〜プロロ〜グ
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 ある竜の里に隻眼だが体が大きく立派な王が治める国があった。
あるとき、王が伴侶を決めることとなった。
一般の竜の寿命は二百年ほどだが、王族に限っては千年生きる。
そのためどうしても伴侶が先に亡くなってしまい、こうして何度か王の伴侶探しが行われるのだ。
 人型になったときに性質や気性によって女性型だったり、男性型だったりすることはあるが基本竜に性別の区別はない。
そのためたいていは女性型の竜が伴侶に選ばれることが多いが、男性型の竜が伴侶に選ばれることもある。
今回選ばれたのは男性型の竜だった。
名前をカズヒラといった。
カズヒラは思った。
他にも強くたくましくなおかつ美しい竜はたくさんいた。
(セシールが選ばれるかと思ったのに)
セシールは女性型の竜で見た目は美しいばかりか力も強く血統も王の親族である。皆が彼女が選ばれるだろうと思っていた。
カズヒラだって決して見劣りはしていない。
金の鱗は輝くほど美しかったし賢い竜だった。
実際一般の竜からは伴侶になってほしいだのなってくれだのと引く手数多である。
しかし彼は血統もあまりよくなく、そのうえまだ一度も巣を作ったことがなかったのだ。
竜にとって巣はとても大事である。
竜は子を産むさい、里を離れる。
しかしそうすると人間や獣人族など他の部族との接触が増えるため子を育てる間自分たちの生活の場を守る巣が必要になる。
たいてい伴侶を得たいものは先に巣を作り、プロポーズし。
相手がその巣を気に入るかで結婚が決まる。
伴侶を申し込んでくるものの巣はカズヒラにとってどれも気に入らなかったし。
里での生活が気に入っておりとくに伴侶も必要としていなかったので全く巣を作ろうと思わなかったのだ。



「あの……俺、巣がないんですけど……」
「これから作ればいいじゃないか」
王様は当然自ら巣なんて作らない。
選ばれた伴侶の巣に子が生まれ育つまで一緒に暮らす。
そのため、王の伴侶選びには巣のレベルも重要視されていた。
産まれ育つ子供は当然次の王になるわけで、王の住む場所なのだから人間が簡単に襲ってくるような巣では住むことができない。
「こ、これから!?」
「あぁ、お前の巣が立派になったら俺も行く。だからがんばってくれ」
「えぇ〜〜〜〜〜」
こうしてカズヒラははじめて巣作りに挑むことになりました。

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