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□巣作りドラゴン〜俺達結婚しました
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「ではこれより婚礼の儀を……」
形式的な儀式を終えた後、国民にお披露目。
さらに各お偉いさんに挨拶に回って…それから何をしたっけ?
やっと自由な時間が取れてカズヒラは正装のままソファに沈んだ。
王であるスネークはまだ何かいろいろあるらしい。
ご苦労なことだ。
あのとき「結婚してやるよ」なんてかっこよく言ってしまったがすでに後悔しそうだ。
「あ〜、疲れた」
喉もカラカラだがここには気軽に「お茶!」と言えるマングースもソリッドもいない。
メイドに言えばいいのかもしれないが、極度に疲れてる今知らない顔に側にいられるのもうっとうしい。
これで正式にスネークの伴侶となったわけだが……正直あまり実感がない。
この正殿でしばらくは様々な儀礼に追われることになりおそらく巣に帰るまではこんな感じだ。
巣に戻ってもスネークが増えるだけでたいしてやることも変わらないし……いや、変わるか。
とりあえずはこの喉の渇きを癒すべく起き上がる。







「カズ?」
スネークがやっと執務を終え部屋に戻るとカズヒラは先に眠ってしまっていた。
「……はぁ……まぁ仕方ないか。ハードスケジュールだったしな」
風呂に入ってろくに乾かしもせずに寝たのか髪の毛はしっとりと濡れている。
それを書き上げてやると少し呻いて寝返りをうったが起きる様子はない。
寝顔は少し幼くて昔の面影が残っている。
はじめは、なかなか次の伴侶を得る気になれない言い訳に彼を使っていたかもしれない。
しかし次第に成長していく彼は自分の予想以上に賢く美しく魅力的に育った。
当然そうなると周りがほうっておかなくなる。
彼に本命が現れるようならばあの話はなかったことにしよう、とホーネットにもらしたこともある。
しかし本気で恋人を作る気はなかったのか長く続く相手はいなかった。
気ままに奔放に相手を変えていく。
スネークは次第に気が気でなくなった。
思わず権力を使って邪魔までしてしまった。
会えばこちらのことを思い出してくれるかもしれないと声をあれこれかけてみるがなしのつぶて。
そしてとうとう彼も成人し、側近たちから伴侶を決めるようせっつかれた。
もうそのときには相手はカズヒラ以外に考えられなくなっていた。
出来れば、本当はカズヒラがいうように結婚を迫る前に友人としてでもいいから二人でいろんなことをしたかった。
しかし時間の猶予は与えられず結局命令したような形になり嫌われていないかと不安になったこともあった。
それでも彼からやりなおしてくれた。
あのとき空虚な穴を少し埋めてくれた小さな存在は今やすっかり自分の心を占めて穴なんてどこにもない。
愛おしくてたまらない。
起こしてしまったらかわいそうかな、と思ったが抱きしめずにはいられず強くかき寄せる。
さすがに苦しくなったのかカズヒラが目を開けた。
「…………スネーク?……くるしい……」
「すまん」
カズヒラはでも抵抗せずに腕の中におさまりあいている手でスネークの背中を数度ぽんぽんとあやすように叩いた。
そしてそのまま静かな寝息に変わっていった。
今晩はこのままカズヒラを腕におさめて寝よう。
そうしたらきっといい夢が見られる。



やっと二人で巣に戻ることが出来た。
カズヒラが頑張って作った素晴らしい巣。
ここからやっと二人の生活が……と思いスネークは背後にじとりとつめたい視線を感じた。
あぁそういえばこんなのがいたんだっけど今更思い出した。
はじめはカズヒラを討伐にきたはずなのに忠誠を誓いカズの竜騎士になった人間、ソリッド。
人間でもカズの魅力を理解したのは褒めてやりたいが、邪魔は許さない。
「……今日がやっと初夜なんだからな、邪魔するなよ。人間」
「滅相もない。なんで俺が邪魔を?」
スネーク相手でもソリッドはしれっと答える。
「おかえりなさい!」
「ただいま〜」
何故か商会に戻るはずのマングースもまだ残っている。
執務のために明日からはここにホーネットも詰めることになっている。
二人の……生活?
全く二人きりになんてなれないじゃないか!
「がぁぁぁぁ!」
「あぁ!スネーク!!巣を壊さないでぇ!」
「カズヒラさま!危険ですから奥に行きましょう!」
「え?え?」
「人間!カズをどこに連れて行く!」
「あなたが暴れるからでしょう」
「す、スネークとにかく落ち着いて!お、お茶いれるから!」
「損傷箇所、修繕しますか?これくらいになりますけど」
「マングースも早速そろばん出さない!」
「くそっ……ちっとも二人になれないじゃないか!」
「……スネーク、賑やかなのもいいよ。一人よりはずっと」
そういってスネークを宥めるカズヒラの顔が本当に楽しそうだったので許すことにしたスネークだった。
もちろん初夜だけは絶対に邪魔させるものかといきまきながら。




了。



本編終了〜vvvお疲れ様!

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