SS2

□サバイバルミラー
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さてここはジャングルのド真ん中。
輸送機が墜落し、乗っていたMSFの副司令カズヒラ・ミラーとまだ新兵ばかりの小部隊の安否が気遣われたが彼らは幸いにも一人も怪我することなく逃げていた。
しかし無線機は壊れマザーベースとは連絡が取れず、また諸事情によりすぐには救助が見込めなかった。
「しばらくは救助も見込めない。食料や装備品も輸送機と共に炎上した。
現状我々が生き残るすべは唯一つ。環境への完全なる適応…すなわちゴリラだ!」
副司令ミラーは拳を振り上げ熱弁した。
「……ゴリラ?」
しかしイマイチわかっていない隊員たちは頭をひねる。
「すなわちサバイバル!野生にかえれ!」
「サーイエッサー!」
「ばかもん!ゴリラパーンチ!」
「ぐあぁぁ!」
「サーだと!?ゴリラがサーなどというものか!返事の前と後ろにはウホッとつけろ!このクソがぁ!」
「ウホッイエスウホッ!」
「よし!マングース!このクソ甘シュガー兵どもに『大自然あるある』を叩き込め!」
「メッチャ蟻ニカマレルヨネ〜、アト寄生虫ハ噛メバ死ヌッテボス言ッテタヨネ〜」
「よし!見事だ!」
「えぇ!?見事なんですか?」
いまだこのテンションについていけない隊員がオロオロと周りを見回したが皆納得しているようだ。
「隊員G!」
「ウホッイエスウホッ!」
「貴様のGはどういう意味か……もちろん分かるな?」
「えぇ!我こそがゴリラ・オブ・ゴリラ……みなぎっていますよ!野生のパワーが!!」
「ゴキブリの略だ!俺が嫌いだから死ね!」
「えぇ!?」
どこから出したのか虫除けスプレーを吹きかけるミラー。
しかし隊員Gも負けてはいない。
「うへへぇ〜ゴキブリだぞ〜」とカサカサとゴキブリの真似をしてミラーを追いかける。
「ぎゃぁ〜!マングース!」
パァン!
マングースにより麻酔銃により隊員Gは倒れた。
「さて、気を取り直して本題に戻ろう」
「副司令がズレたんですよ」
パァン!
マングースが…以下略。
「ゴリラにとって木登りスキルは必須だ!貴様ら軟弱なクソどもがバナナを手に入れるには訓練が必要だ!今から俺がこのツルを登って手本を見せてやる!」
「ウホッイエスウホッ!」
ミラーは一本のツルを使いスルスルと器用に木に登りバナナをゲットした。
「おぉ!」
「すごい!」
「よし!バナナを手に入れた!
降りるときは手と足でブレーキをかけつつ滑り降りるんだ!」
「ウホッ!イエスウホッ!」
「焦らず慎重に降りろ!」
そう叫びながら降りてくるミラーのツルの下に一人の隊員が吸い寄せられるように……。
(うふふ〜親方〜、空からケツが降ってきます〜)などとニヤニヤしながら眺めていた。
もちろん気付いていないミラー。
そのまま彼のお尻は……。
ズンっ!ボキッ!
「首っ!首がぁ〜!!」
思い切り隊員の顔面にミラーのお尻が落ちてきた。
ミラーのお尻もただではすまなかった。
ズキズキと痛む尻をさする「なんでそんなところにいる!バカボンクラ!」と怒鳴るが首の痛みでのた打ち回る隊員はそれどころではない。
バカである。
「バカは放っておいて、さぁ訓練を開始しろお前ら!」
「ウホッイエスウホッ!」
「もっと早く動け!そんなことで野生を生き延びられるか!このクソッタレがぁ!」
「ウホッイエスウホッ!」
厳しい声に煽られるように各自ツルにつかまり上り降りするが思った以上にきつくぜぇぜぇと息切れするものが続出する。
「もうバテたのか、クズが!自然の前で能無しは死ぬだけだぞ!
ボスの食への執着を思い出せ!まさにあれこそ野生!あれぐらい必死に生きてみろ!」
すっかりとバテきったモノたちが倒れ伏し隠れて(好き勝手言いやがって!)と罵倒するも彼に手を出そうものなら後でボスにどんな恐ろしい目にあわされるか…すでに新兵である彼らでも心得ている。
「そうだ!オレに考えがある!」
隊員Sは一部の兵士を集めた。
その頃ミラーはバテて倒れたものたちは無視し、まだ訓練を続ける者たちに指導していた。
そのミラーに声がかけられた。
「副司令!」
「ん?」
ミラーが振り返るとそこにはよく見たようなものだたくさんぶら下がっている。
バナナではない。
「おわぁぁぁぁ!なんだどうしたお前らぁ!」
「野生かつゴリラが何故衣服を着用するのか!
大自然に向き合う姿勢とはコレ全の裸であるべき!!!」
くわっと隊員Cが全裸で叫ぶ。
他のモノたちも皆全裸だ。
これだけ並ぶとむさくるしく気持ち悪い。
ミラーはうへぇと眉をしかめた。
「た、確かに一理あるが……」
助けを求めてマングースを探すと、彼もすでに全裸だった。
「もはや我々のほうが大分野生。立場は逆転しましたな」
「ば、バカにするなよ!クズどもが!全裸なら俺のほうが経験多いんだぞ!」
ミラーも負けじと野戦服をぬぎ全裸になる。
「ど、どうだ!これで条件は同じだぞ!」
日にあまり焼けていない白くてムチっとした裸体が晒される。
「ならば俺のほうが上だ!」
「イヤ〜ヤッパリミラーサンニハカナワネーヤ〜」
「ミラー、ナンバーワン!」
「ビューティフォー……」
「なんでお前らカタコト……ってナニお前らおっ勃ててんだよ!」
「え?これはミラーさんを称えているんですよ!」
「そうチ○こで!」
「アホか!」
「それより副司令!あらためて訓練をお願いします!」
「う……」
全裸には慣れているがさすがにまわりに○ンコおっ勃てている野郎共を前に尻込みする。
思わず前を隠して(正確には後ろを隠したほうがいいような気もするが気分的に)もじもじしていると「前かくしてどうするんですか!」だの「手をどけないと素早い動きなんて出来ませんよ!」とやじられる。
「だったらお前らこそそのチ○コなんとかしろ!」と言い返したいところだが何故かそれを言うのは躊躇われる。
理由を知りたくない。
「副司令……」
そっと後ろから声をかけられてビクリとミラーが後ろを振り向くと一人の隊員が何かを手に立っていた。
「せめてこの布を……」
「隊員S……でも……着てもいいのか?俺をバカにしないか?」
「いいんですよ、副司令……どんな姿でもオレは副司令のこと尊敬してますから……」
「隊員S……」
おずおずとその手を伸ばしソレを受けとろうとする。
「てめぇ!裏切ってポイント稼いでんじゃねぇよ!」
しかし他の隊員からバッシングを受ける隊員S。
思い切り背中を叩かれ「ぐあっ!」と呻く。
「隊員S!」
「そう、オレは隊員S……そのSはスケベのSでもサドでもなく……紳士のSでありたい……クッ!」
ひっきりなしに他の隊員から叩かれまくっている背中は真っ赤な手形でいっぱいだ。
「隊員S……お前ってやつは……」
「さぁ!早くそれを!!」
「……恩に着るぞ!服だけに!」
「上手くないです……副司令……」
ミラーはソレをバサリと着る。
「さぁ!待たせたなクソッタレども!さっきの千倍厳しい訓練を……」
意気込むミラーの体に合わせるようにフワリと舞うソレ。
カシャッ!カシャカシャッ!
淡い水色のフリルエプロンが風にたなびき周りでは隊員たちがフラッシュをたきまくる。
「ってこれ単なるお前の趣味じゃねぇか!!!!!あとお前らはそのカメラどっから持ってきやがった。全部没収だぁ!」
「眼福でした……副司令……ガクリ……」
「ふぅ……蚊に刺されてマラリアになっても困る。全員着衣!」
「ウホッ!イエスウホッ!」
全員がもそもそと服を着ている影で「隊員S、さっきはすまねぇ。お前を誤解していた」「いいってことよ」「お前のSは策士のSだ!」と友情が盛り上がっていたのはミラーは知らない。



数日後……。
探しにきたスネークによってカズたちは発見された。
「カズ!無事か!!」
「スネーク!!」
隊員たちはボロボロで疲れきった顔をしていたが何故か一人カズだけは小奇麗にいつもとほぼ変わらなく(さすがに髪のセットまでは出来ないため前髪はおりていたが)不思議に思ったが元気そうな姿にスネークはホッとした。
見つけた隊員たちを疲労しきっているだろうと担架を持ち出してきたが「必要ない」とカズが一言いうと、疲れていたはずの隊員たちが見事な統率でキビキビと動き出した。
つい先日までろくな訓練も受けていない新兵たちだったはずだがそれは見事な部隊へと変化していた。
「よし!ベースへ帰還するぞお前ら」
「ウホッ!イエスウホッ!」
スネークはカズの鬼教官の一部を垣間見てぽかーんと口を開ける他なかった。






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