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□狭間の一時
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カズヒラは軟派な外見や態度とは裏腹に意外に頭が良く勤勉家だ。
軍事、戦略に留まらずサバイバルからサイエンス、歴史に政治情勢。
必要と思われるものは全て網羅する。
一体いつそんな勉強をしているのかと不思議に思い数日観察してみた。

カレーを食べながら取り寄せたサイエンス雑誌を読み耽る。
まぁ、行儀はよくないが一秒も無駄にしたくないのだろう。
さらにトレーニング時。
片手で腕立て伏せをしながらあいた手にはやはり何かの本。
器用だな、と眺めているとカズが気がついた。
「なんだ? 何かあったか?」
流れた汗を首にかけていたタオルで拭きながらカズが立ち上がる。
「いや、トレーニングしながらで本の内容分かるのか?」
「ん? 分かるぞ。まぁ慣れ、かなぁ」
「そんなに勉強してどうする?」
「どうって……。覚えて損することはないだろう? ボスのサポートにも役立ってると自負してるけどな」
「まぁ確かに助かってるけどな」
必死になっているその姿を見ていると、何を焦っているのかと問い詰めたくなるがそれは禁句のような気がした。

「根詰めるなよ」
「だあいじょうぶさ〜、ちゃんと抜くとこは抜いてるよ。
ボスこそ無理しないでくれよ。俺たちはまさしく身体が資本なんだから」
そう言って笑う顔はへらへらと実にだらしない顔なのだが。
本当の顔はどこにあるのだろう。
何も言わずに彼のサングラスをはずす。
「あ、ちょ……」
じっと睨みつけたあと、ちょんと目の下をつつく。
「クマ……出来てるぞ」
「あ〜……」
「少し休め」
「え〜、それってぇボスが添い寝してくれるの?」
「お望みなら俺のC・Q・Cで落ちるまで絞めてやろうか? それとも麻酔銃で一発で眠らせてやろうか」
「……ごめんなさい。や、でも本当にちゃんと寝てはいるんだ。ただ目の疲れね……」
言い訳をしながらついて来るカズをシャワー室に誘導しながら、さてどうやってしばらく本やらから離させるかな、と思案した。
見張る? 拘束?
思い付くものが全てなにやら物騒なことばかりだが、まぁカズなら問題なかろうと伸びをした。

そうだな、急なミッションも今はないし明日は本なんて読む余裕もないくらいに自らしごいてやるのもいいかもしれない。

そんな狭間の一時。
 

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