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□脱げ!
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「脱げ!」
「……カズ……何だ、いきなり」
「洗濯しちゃいたいんだよ!だから脱げ!」
「はぁ?洗濯???別に昨日今日はミッションにも出てないし汚れてないぞ」
「ミッションでなくたって汗かくんだよ!毎日汚れるの!」
「別にそれくらい……着替えなくたって死なないだろ」
「昨日からそのまんまだなんて俺には信じられない!くさい!むさい!」
「おい……」
「ただでさえ、男所帯でむさいんだからせめて清潔にいこう!」
「…………カズ……」
「……ん?……昨日から……そのまま……まさかシャワーも浴びていないのか!?」
「そりゃそうだろ?」
「訓練後も?」
「汗は拭いたぞ。身体を冷やさないようにな」
「なんてことだ!いますぐシャワー室行け!」
「嫌だ!」
「そして脱いだ服よこせ!」
「断る!」
「脱げ〜!!」
「嫌だ〜!!」

その追いかけっこを見ていた兵士の間で後日『ミラーさんがボスを押し倒そうとしていた』などという噂が広まりカズがもみ消すのに苦労した、らしい。

「ふぅ、やれやれ。回収完了っと……あれ?何か足りない……?」
何か違和感を感じたカズは同じく洗濯部隊の兵士に確認して回った。
しかしそれぞれの班の回収は完了していた。
そこへ「今日はあっついなぁ」などと額の汗を拭いながら通り過ぎる少年。
「あっ!チコ!!」
「えっ?何?ミラーさん」
「お前っ洗濯物出してないだろう!」
「……だって着替えてないもの。汚れ物出てないよ」
「……お前もか〜!!!!」
「え?」
「ちゃんと毎日着替えろ!シャワー浴びろ! そして洗濯物はキチンと所定の場所に出してくれ!」
「……くんくん……まだそんなにくさくないよ?」
「……さっき汗かいてただろ?」
「……俺、汗は頭にしかかかないんだ!ホラ!身体は汗かいてないぜ!」といってお腹をめくって見せる。
「それは服が汗吸い取ったの!……チコ?あんまり不潔だとパスに嫌われるぞ?」
「えっ……それ本当?」
「あぁ〜、女の子は清潔な男が好きなんだ」
「そ、そうなのか……」
「あら?どうしたの?」
「あ、アマンダ……姉さんなんだからアンタからも言ってやってくれ。毎日着替えろって」
「ん?毎日着替えなくったって別に死なないじゃない」
「……アンタもか……アマンダ……」

ハタハタとはためく洗濯物を眺めながらため息混じりに哀愁を漂わせる男が一人。
「……気持ちいいんだけどな……洗濯……何故わかってくれないんだ……俺がおかしいのか……」
男所帯のお母さんはいつも大変です。
「ファブリーズ……買ってこよ……」
(この時代ないとか言わない!)

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