れんさい
□脱出[FF12-3]
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「空賊…か。」
「あらあら、そんなすぐにバレるとは。」
俺のことを真っすぐにみたまま、視線を離そうとしないラスラ陛下の目を見る。
「なんのために、この屋敷に入った。」
なんなんだろう。この上から押さえる感覚は…
なんだか、イライラする。
「それを知ったところで、どうするつもりだ?だいたい王子様こそ何やって…失礼。“何をなさっていらっしゃるのです”か?」
「家臣になって“いただいた”つもりはないが。」
「そうか。奇遇だな。なら、俺には答える義務はないな。」
茶化してみたが、少し目線を上に反らしただけで、もう一度おれに戻してきた。
「――私は、ここの城主が不正に民から税を搾取していると聞いたので、話を聞きにきただけだ。」
話してもいいと判断したのだろうか。下から出てきた。自己紹介は自分から…という礼儀だろうか。
別に聞きたくもない。
「聞いちゃいないがね。だか…王子様が犯罪者の取り調べだけのために、わざわざこんなトコまで来たのか、一人で。」
「一人のつもりはないがな。」
「……。」
「先ほど、君がのしてくれたものは、私の臣下だが。」
次は、えらく強気だな。
女だったら、どれだけ美人なことだろうか。
考えるとくっ、と笑いが漏れた。
「それはそれは、弱々しい者をお連れになっていらっしゃる。」
「……。」
「……。」
コツンという音が窓を鳴らした。
「だいたい、私がここに赴いたのは―――」
次は、ムキになってくる。子供のようだ。
まったく…なんと可愛らしい。
笑いが出る。
「ここの城主にでも、呼ばれたか?」
「!!」
「ビンゴ?」
ふっと笑って見せると、より怒ってしまったようだ。
「関係ないだろう。」
「ああ。俺には一切関係ない。それに王子様がここにいようといまいと、それも関係ない。OK?という訳で。」
窓に向かって一歩を踏み出した。
あの、ヴィエラが作ってくれたであろう逃げ道を掴むために。
「…!?待て!」
剣にかけようとした手を、先に掴んでやった。
「王子様は守られるほうが似合ってるぜ?」
王子様の端整な顔立ちは、すこし間が抜けた。
そのような顔に俺は、見送られた。