□忍び(坊カス)
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「ティル様ここは任せてください」
「パーンでも!!」
「すぐに追い付きますから」

こんな時でもパーンは笑顔で答えた。
ティルは残りたい気持ちが少しあったが、解放軍リーダーとして死ぬわけにはいかなくその場をあとにする。



本拠地へ戻り、自分の部屋で待つティル。
夜になり、自分に風が吹き付ける中大きな月を見ていた。

「カスミいる?」
「はい?」

ふっと目の前にカスミは現れる。
月の前に立ち、逆光を浴びた姿はなんとも神秘的な姿だった。
一瞬ティルは動きが止まる。

「ティル様?」
「ご、ごめん…」

何を言いたかったのか忘れた。
ただ、沈黙が続く。



「大丈夫ですよ」


カスミのもらした一言。
何に対しての大丈夫?
自分自身?
パーン?
父?

「大丈夫です、パーン様は必ず帰ってきます。お父上様も、ティル様が解放軍で戦っている理由をきっとわかってくれますよ」

カスミなりに気をつかっているのだろう。
声が少し震えている。
そんなカスミをティルは抱き締めた。

「テ、ティル様!?」





―ありがとう。



ティルの小さな声。
普通の人なら聞きづらくても忍びのカスミには聞こえた。
熱いものが頬に流れた。
肩も熱くなっていく。
ティルの涙。


「…〜さま、ティル様!!」

クレオの声が遠くから聞こえてくる。
それに気付き、2人は『パッ』と離れる。

「ティル様!!」
「そんなに慌てどうしたんだ?」
「カスミさんも一緒でしたか、パーンが戻って来ました!」

戻ってきた。
あの父の元から戻ってきた。

「パーン!!」
「ティル様!!」

無事に帰ってきてみんなが喜ぶ。
パーンの体を見ると、ケガはあるもののそれほど大きくはなかった。

「良く、あの父から無事に帰ってこれたな?」
「…もしかしたらテオ様は手加減をしてくれたのかもしれません。でも、次は手加減なく全力でかかってくるかと…」

また悩む。
するとフリックが火炎槍の話を持ち出してきた。
そしてティル達は、サラディの町まで行くことにした。




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