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□愛しちゃったのよ
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絶対におかしい

いや、むしろ変だ

この私が、あの人にこんな感情を抱くなんて…



愛しちゃったのよ



親族会議のため六軒島に集った右代宮家。

しかし天候が悪く、滞在を余儀なくされていた。


「はぁ…こうも雨が続くと、憂鬱ねぇ…」

「仕方ないですよ、台風が来ているんですから」

窓の外で未だ止みそうもない雨を、客間から見ている絵羽と霧江。

「まぁ、お茶でも飲みませんか?」

「そうねぇ、誰かにお願いしようかしらぁ」

絵羽は内線でお茶を頼み、嘉音がお茶菓子と一緒にティーセットを乗せて運んで来た。

「また何かありましたら、いつでもお申し付け下さい
それでは、失礼致します」

嘉音は深く頭を下げ退出した。



「時に絵羽姉さん、夏妃姉さんのことどう思ってるんですか?」

「ぶばぁっ!!ゲホゲホっ…いい、いきなり何言い出すのよぅ!!」

霧江の思わぬ一言に、絵羽は飲んでいた紅茶を勢いよく吹き出し噎せた。

「あら、物凄く分かりやすい反応」

顔を真っ赤にして動揺している絵羽を、クスクスと笑いながら見た。

「で、どうなんですか?」

「……別に、姉さんのことなんか…」

「あら、霧江さんここにいたの?…姉さんと」

『楼座グッタイミングッ!!』と絵羽は心の中で叫び、小さくガッツポーズをした。

「何か私に用ですか?」

「特に用はないわ、ただ〜一緒に居たかっただけよ」

霧江の腕に蔓のように絡み付き、顔を近づけていく。

そして、絵羽が居るにも関わらず可愛く音をたてキスをした。

「あぁっああんた達、なっなにして!!」

「何って…キスぅ?」

「駄目ですよ楼座さん、絵羽姉さんがいるのに」

「だってぇ〜寂しかったんだもぉん」

イチャイチャし始める2人に、どこかもどかしく感じる絵羽。

「言えばどうです?」

「…何を?」

「もぉ〜素直に好きって言えばいいじゃない!姉さんも意地っ張りね〜」

「そんなこと、簡単に言えるわけないでしょぉ!!大体なんなのよぅ!さっきからイッチャイッチャしてぇ、嫌がらせ!?嫌がらせなのぉっ!?」

絵羽はキレた。

夏妃を罵ることしかしていなかった自分が、その真逆のことをする度胸がないことを霧江は気づいてないから、そんな風に言ってくるのだと思っていた絵羽。

「怖いんでしょう?拒絶されることが」

「…っ!?」

霧江には全て分かっていた。

なんせ、あのプライドの高い夏妃のことだ。普段自分のことを罵りプライドを傷つける族に、いきなり『好きです』なんて言われれば…どうなるかなんて想定済みだ。

「姉さんの想いの強さによるわ…自分が傷ついてでも夏妃姉さんへの想いは変わらないのか、自分が傷つくくらいなら諦めるのか…」
楼座の顔つきが変わった。

絵羽は俯き心の中で呟く。

『私は…』

「絵羽姉さんっ!」

『あの人が…』

「姉さんっ!」

『夏妃姉さんのことが…』

「絵羽「姉さんっ!!」」

「好きっ!!」

次の瞬間、絵羽は客間から飛び出した。



「上手くいけばいいんだけど…」

「大丈夫です、絵羽姉さんの目を見たでしょう?

絶対に…」



「っはぁっはぁ…姉さん、夏妃姉さんっ…」

夏妃を求め屋敷内を走り回る絵羽。

曲がり角で探し求めた人物とぶつかり、相手の方へ倒れ込んでしまった。

「えっ絵羽さん!?危ないじゃな…」

「好きっ!!好きなのっ!!姉さんのこと…愛しちゃった…のぉ…」

夏妃は突然半泣き状態の妹からの告白に驚いたが『絵羽にも可愛い所がある』のだと思って、自分の上にいる妹の頭をふわりと包み込みなだめた。

自分の思いが伝わったと思った絵羽は、安心からか涙が溢れ止まらなくなり夏妃の胸に顔を埋め泣いた。




愛しちゃったのよ


貴女だけを





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