西浦ーぜだいすき

□その手で掴め
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雲が大空に広がっている時、太陽の光を受けて薄く線のようなものが浮かぶ。

…上手く説明できないけど。


俺はそれを、天使の光みたいだと思う。
輝いてずっと見ていたくなるようなその光。

その光は、俺のすぐ近くにもある。



「なぁはない〜!」
「なんだ?わかんねぇトコあったか?」

休日。部活が休みな今日、俺と田島は田島んちで勉強をしていた。
田島は立ち上がって伸びをする。
「ん〜ん。そんなんじゃあないんだけど…」
すると田島がモジモジして俺を上目線で見つめる。
「?なに」
早くしろ、と言うように、俺は田島を見つめ返す。

「あんまオレ、見ないで。」
「…は?」
何かと思えばコイツはいきなり何を言い出すんだ。

「はないがオレ見てるって思うと、なんかシューチューできないし」

「さっきから集中なんかしてなかったろ?」
「してた!…と、思う…。」
「ほらな」
「違うの!!オレが言いたいのは、はないがエロいってこと!」

またまた田島は、意味の解らないことを言ってくる。
「なんで俺がエロいんだよ?」
田島に上目遣いで訊くと、田島は勢い良く俺を指差した。

「それ!その目!!」
「目ぇ?」
「上目遣いなんて反則だ!」
「はぁ!?意味わかんね」
「なんかね?はないに見つめられてるって思うと、背中がゾクゾク〜!ってすんだ!」

「ふぅん…?」
一応頷いたが、よくわからない。
背中がゾクゾク?何で?
「だからやめてよね!!」
田島が何度も言ってきて、そんなに見られたくねぇんだ、と思って、少し腹が立った。

「…わかった、見ない。」
田島の顔が明るくなる。「ホント!?ありがとはない〜!」

「あぁ、一生な。」
田島の笑っていた顔が固まるのがわかった。

それでも俺は続ける。
「見てほしくねぇんだろ?」
「えっ!…で、でも!」
「でも何だよ。」
俺も意地悪な性格だと思う。


「はないに見つめられて、もっとゾクゾクしたいから見てて!」


「……」
よくわからない。さっきと言っていることが逆じゃないか。

「だから、ジャンジャン見てよっ!」

ー…あぁ、眩しい。
田島が笑った瞬間、辺りが眩しくなった。

天使の光…そのまんま。
眩しい光に包まれた田島は、ホントの天使のようだった。


「ん?どしたぁ〜?はない」
「え、あ…イヤ、別に」「ふ〜ん。そ?」


なんなんだコイツは。
こんな子供みたいな野球バカが、なんであんな眩しいんだ。

「あっ!そだっはない!」
「ん?」


「オレのこと見んの、やめないんでしょ?」


やめたいよ。
だって見てたら、いつか目が潰れるから。

こんな眩しい子供、多分田島だけ。
「何?はない。そんなに見つめて。」

「お前が見ろって言ったんだろ。」
「あ、そっか!もっと見ていーよ!」


俺は思う。
もしかしたら田島は、ホントに天使の子なんじゃないかと。

だとしたら、わざわざ俺に、空から会いに来てくれたのだ。



ぎゅっ
「…!?は、はない?」
「放さねーからな」


コイツをまた、空へ戻しはしない。
放さない。

眩しすぎたって、目が潰れたって構わない。
田島の光をずっと見ていたい。
俺のものだ。
誰にも渡さない。



抱きしめていた田島の体を一旦放し、手を握る。
「どーしたの?はない。なんか今日は積極的…///」
「い、いいからっ!//」

君が空へ戻らないように、俺は強く強く田島の手を握った。
 

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