西浦ーぜだいすき
□あ ず さ
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「はないぃ〜」
「ん〜?」
日曜日。今日は部活が休みなため、花井と田島の2人は田島の家で勉強をしている。
「はないぃ〜?」
「お〜」
田島が机を挟み花井の前で名前を呼んでも、さっきから花井は曖昧な返事しかしない。
「…むぅ〜っ」
田島は頬をぷくっと膨らませ、最後の手段に出る。
「あ〜ず〜さ〜っ!」
その瞬間、花井は数学の問題集から目を離し、田島を見た。
「うししっ♪やっと見てくれたっ」
「……」
「もぉ〜はないってば全然こっち見てくれないんだ……もん……って、はない何か怒ってる…?」「……」
「えへへぇ〜…」
田島がぎこちない笑顔になる。
人は時に、声を荒げて怒るより、黙っている方が恐い時がある。
それが今だ。
「……田島…」
花井が口を開く。
「な…に?」
「その名前で呼ぶな…」「へ?花井?」
「違う」
「あずさ?」
ー…ブチッ
「呼〜ぶ〜な〜っ!!」
「いでっ!いでででででっ!!」
花井が田島の頭をグーでグリグリと攻撃する。
「ごめん!ごめんって!!お願いだから止めてー!」
「…ふぅ…」
花井が攻撃を止めた。
田島は大きな息をつく。
「でもさぁ、何でダメなの?イイと思うけどなぁオレは。」
「俺は嫌なんだよ!」
花井は、この名前が原因で小さい頃いじめられていたのだ。
もっとも、今は見た目も長身、坊主ということで、いじめられることはなくなったが。
それでも花井は、下の名前で呼ばれることは好ましくなかった。
「……あーたん。」
「は?」
田島が突然、意味のわからないことを言った。
「いやだからー、下の名前がイヤなら、イヤんなんないようにあだ名考えてあげようと思って♪」
だからあーたん。
すごいネーミングセンス……。
「さすがにこの年であーたんはねぇだろ。つーかそれ、下の名前で呼ばれるより嫌だし。」
「えぇっ!?なんでだよーっ!!イイと思ったのにぃ〜っ!!」
「……なぁ田島。」
「ん?なにぃ?」
田島は真剣にあだ名を考え、腕を組みながら返事をする。
「田島は自分の名前って好きか?」
「あったり前じゃーんっ♪大スキ!もちろん花井もねっ!!」
「一言余計だ…///」
花井の顔は、少し赤くなる。
その様子に田島まで、なんだか顔が赤くなる。
「俺はさ、ずっとこの名前が嫌いで、なんでもっと違うかっこいい名前にしてくれなかったんだろって、いっつも思ってた。」
「梓だって、イイ名前だよ。」
「うん。田島がそう言ってさ、俺ちょっと思った。」
「何を?」
「この名前を付けてくれたのは母さんで、勿論俺を産んでくれたのも母さんなんだ。」
「そーだねぇ」
田島はまだ、花井が何を言いたいのかわかっていない。
「それでさ、違うかもしんないけど、俺、梓って名前じゃなきゃ、田島と出会ってなかったんじゃないかって…///いっ、意味わかんねえよなっ!!悪ぃ今の忘れてくれ!//」
花井の顔は、タコよりもまっかだった。
「だーめ。忘れないよ。」
田島がいたずらっぽく笑う。
「なっ、なんで!///」
「だって、せっかくはないが嬉しいこと言ってくれたんだもん♪忘れてあげない!」
「〜っ…///」
「梓。」
「なんだよ。」
「はないの照れてる顔、もっと見たいからさっ、梓って呼んでイイ?」
「……断固拒否する。」
「えぇ〜っなんで!!はないのSぅーっ!!」
「Sはお前だろ!!///」
「あ、照れてる…?何で?」
「うっ…うるせー!!とにかく、ぜってー許さねぇからな!!///」
「はない照れてるっ♪かーわいっ♪梓〜っ!!」
「黙れぇ〜!!///」
勉強はいいのだろうか?その後も2人はイチャイチャと時を過ごし、次のテスト、赤点をとったかどうかは…神のみぞ知る。